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「こだわり」を「続ける」ことが価値になる—競争が激化するIT業界でYAZ田中社長が実践する企業の在り方とは

株式会社YAZ

代表取締役CEO

田中 康之

経営者のキャリア

高校入学前までは、将来の進路を政治家か社長のどちらにするかで迷っていました。両者を比べた時に、政治家は長い下積みが必要である点や、多くの意見を聞きながらも、全ての意見を政策に活かせるわけではなく絞らざるを得ない点が自分に合わないと感じました。一方社長であれば、政治家に比べ下積みなく自らの意思で挑戦でき、自らの意思を首尾一貫して事業に取り組める点が魅力的だと思い、社長になることを決めました。

 

高校生の時には、起業するならコンピューターシステムソフトウエアの分野と決めていました。設備投資が少なくてもビジネスを始められるからです。そのため大学は理工学部に進学し、卒業後は大学院にはいかず就職の道を選びました。

 

起業を前提としたときに、新潟出身で滋賀の大学に通っていた私は東京の人脈をつくることが必要だと考え、「システム開発×シンクタンク」の軸で会社を探し、株式会社富士総合研究所(現・みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)に就職しました。そこでは、企業向けの会計システムの開発を担当すると同時に、上司の勧めで簿記3級取得しました。その時に学んだ会計の知識は今の経営にも役立っています。

 

2年目からは起業の準備を始め3年目創業し、その後1年かけてフリーランスエンジニアとして資本金を貯めて有限会社YAZを立ち上げました。

 

会社や事業の紹介

YAZは2004年に設立し、現在はスマートフォンを中心としたシステム開発をメインに事業を展開しています。ビジネス上スマートフォンアプリは、コンシューマーとの関係性に直接関わる部分でのIT投資を形にするプロジェクトも多く、ここが私たちの得意分野です。また、お客様のIT投資における新しいテクノロジーを活用した研究開発や、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連するプロジェクトにも強みを持っています。

 

今はスマートフォンを中心としたシステム開発に強みを持っていますが、創業当初の2004年当時はもちろんスマートフォンはありませんでした。

 

その頃は、いわゆる「ガラケー」と呼ばれるフィーチャーフォン向けの課金モデルが主流で、着信メロディのダウンロードや占いといったサービスが盛り上がり、iモードという5,000億円規模の市場がありました。ただ、当時の私たちはこの市場には参戦できていませんでした。

 

その後、2006~2007年ごろにはBlogが流行し、アメブロのようなサービスが大きく注目され、mixiやグリーなどのSNS、ソーシャルゲームなどが流行し始めますが、ここにも参入することができませんでした。

 

だからこそ、「次のビジネスの波にはいち早く乗りたい」と考え、市場を注意深く見ていた時に登場したのがiPhone 3です。スマートフォンの時代が来ると確信しましたし、AndroidはJavaベースで構築されていたので、私たちのエンジニアリングスキルを活かせると考え、2010年には市場への参入を決めました。

 

当時はまだ実機の開発端末がない状態で、ソフトウェアのエミュレーターを使いながら開発チームを立ち上げました。早い段階から準備を進めたことで、スマホ市場にスムーズに参入することができ、今の強みに繋がっています。

 

経営ビジョンと理念

私たちのビジョンは「輝く人材を輩出し 輝く社会を創造する」です。「輝く人材」とは、目的意識を持って継続的にチャレンジする姿と定義しています。

 

オリンピック選手が目標に向かって努力する姿は、もし仮に金メダルを取れなかったとしても、多くの人が感銘を受けると思います。それと同じように、私たちもチャレンジし続ける人を応援したい、そういったカルチャーを持つ会社でありたいと考えています。チャレンジする人が増えれば会社の成長に繋がる部分もあるし、社会全体においてもチャレンジする人が増えると「輝く社会」に繋がっていくと考えています。

 

私は、会社に入る人には、「給与UPしたい」「○○の仕事ができるようになりたい」など、必ず何かしらの想いがあると思っています。だから、入社してきた時に、社員ひとり一人がどういったビジョンを持っていて、どうなりたいのか、何を得たいのかをしっかり理解し、その想いに伴走することが大事だと思います。自分がやりたいと言ったことに対して成果が出るのであれば、必然的に頑張りますよね。

 

社員の根本的な目標や想いに対して会社が伴走する環境をつくることが大事です。その方が、本人にとって成果が出やすくなるという良さもあります。

 

具体的には、入社時点で掲げた目標に向かい、上司が定期的に1on1で対話し、適切に伴走することで、目標達成への道筋を共に作り上げていきます。目標を掲げるのは簡単ですが、向き合うことは大変なので、1か月ごとにプロセスを確認するようにしています。

 

競合との差別化ポイント

競合との差別化は課題ではありますが、最近よく思うのは、私たちの強みは「同じことを続けていること」だと思います。IT業界はトレンドの移り変わりが激しいですが、私たちは20年以上にわたって今の事業領域を追求し続けており、これが強みに繋がっています。

お客様に対しても同様で、1回取引が始まると、そこから非常に長くお付き合いしていただくパターンがその強みを証明しています。

 

現在注力していること

現在、特に注力しているのはエンジニアのスキルを見える化するHRソリューション「TRUE COLORS」の開発です。このシステムは、IPA<情報処理推進機構>が開発したiCD<アイコンピテンシーディクショナリ>による2万項目のスキルセットをもとにエンジニアの能力を見える化するものです。スキルチェックは、時間がかかり、煩雑になりがちですが、「TRUE COLORS」を使うことで、スキルの守備範囲や深掘りした分析を簡単に行うことができます。

 

IT企業では、社員のスキル評価が非常に難しい場面が多々あります。プロジェクトごとにメンバーが異なり、上長が直接その社員と一緒に働いていないことも珍しくありません。その結果、本人が「できる」と認識していても、周囲の「できる」という認識とずれが生じることがあり、アサインミスやキャリア目標の設定ミスが起きています。これにより、優秀な社員を正しく評価できなかったり、不具合が発生したりするのです。

 

こうした課題を解決するために、「TRUE COLORS」を開発しました。このシステムは人事評価や、社員の育成、チームの組織分析にも使用することができるので、経営者やマネジメントが組織としてどこを伸ばすべきかがわかるようになっています。

 

今後の展望と挑戦

ITエンジニアが活躍できるビジネス環境やキャリアをもっと良くしていきたいと思っています。その一つが、今注力している「TRUE COLORS」を始め、正しく評価され、稼げるITエンジニアを増やしていくことです。

 

もう一つは、企業のIT投資において成果を上げられるようにすることです。ITエンジニアがどれだけ高いスキルを持っていても、経営面においてITのポジショニングが低ければ、エンジニアがスキルを発揮することはできません。

 

これらの想いから、ITエンジニアの採用分野でできること、ITエンジニアの育成や評価でできること、そしてビジネスにおいてITで成果を出していくためにできることを深堀していきたいと考えています。

 

ただ、これを行うためには当社の人材が不足しています。毎年社員数の10%の新人を迎え、中途採用も積極的に行っています。出社でリアルな交流を大切にするカルチャーを持ちながら、リモート勤務も推奨することで、快適に仕事をするために必要な環境を整えています。これにより、優秀なエンジニアが全国どこでも働ける環境にしていきたいと思っています。

 

メッセージ

競合他社と少しでも違う、ちょっとした「こだわり」を持ち、それを負けない形で「続ける」ことが大切だと思います。

たとえば、私たちの名刺は他社とは違うデザインにしていますが、そのデザインのコンセプトを語れるだけでも武器になります。そうした細部へのこだわりが、お客様の信頼を勝ち取るきっかけになるんです。

どんな小さなことでも、こだわりを持ち続けることで、他にはない価値を提供できるのです。