人材のプロが挑む”何度でもやり直せる社会”の実現

経営者のキャリア
新卒でリクルートに入社し、人材派遣会社「リクルートスタッフィング」の創業立ち上げメンバーの一員となりました。当時、日本にはまだ「紹介予定派遣」という制度が存在しておらず、私は入社2年目にアメリカの全米派遣協会を視察する機会を得て、人材派遣の先進的な仕組みを日本に持ち帰りました。
この立ち上げは1980年代、多様な働き方の必要性が求められ始めた時期です。特に当時は、結婚や出産を機に女性がキャリアを中断せざるを得ない状況が一般的でした。そうした社会の中で、派遣という働き方が新たな選択肢となり得ると信じ、制度の導入と普及に尽力してきました。その後も22年間にわたり人材業界の第一線で働き続け、これまでに30,000人以上の派遣・紹介に携わってきました。さらには、リクルートから出向し、人材派遣・人材紹介事業会社の株式会社三井物産ヒューマンリソースにてCOOとして経営再建に取り組みました。
リクルートを退職した後は、慈恵医大病院と連携する医療法人にて、株式会社メディカル・サーバントの代表取締役社長に就任。エグゼクティブ向けの会員制クリニックの運営に携わり、10年赤字だった組織を1年で黒字化へと導きました。この経験を通じて、医療経営という新たな視点を得ることができたと考えています。
ただ、これまで順風満帆なキャリアに見えるかもしれませんが、27歳のときにパニック障害を発症し、その後十数年にわたってメンタル不調を経験しました。この経験があったからこそ、「人材ビジネス」と「医療」、そして「自身のメンタル不調」という三つの軸が重なり合い、”これまでにない支援のかたち”をつくる決意が固まりました。
そうして立ち上げたのが、リファイン就労支援センターです。かつての自分がそうだったように、社会から一度離れざるを得なかったビジネスパーソンにとって、再び自分らしく生きるための「選択肢」と「希望」を届けられる場所を目指しています。
会社や事業の紹介
リファイン就労支援センターは、うつ病や適応障害などのメンタル不調を抱えるビジネスパーソンに特化した就労移行支援事業所です。一般的な就労移行支援が「障害者手帳を持つ方」を主な対象としているのに対し、リファインでは「会社を休職中の方」や「離職を余儀なくされた方」など、ビジネスの現場で一度つまずいた方々を支援の中心に据えています。現在、利用者の約半数が復職を、残りの半数が再就職を目指し、プログラムに取り組んでいます。
支援の柱となっているのは、自己理解を深める独自プログラムです。具体的には、グループワークを中心にした集団行動療法と「自分取扱説明書」の作成です。
また、カウンセリングやアセスメントを通じて一人ひとりの状態を丁寧に把握した上で、心理的な回復プログラムからビジネスコミュニケーショントレーニング、キャリアの再構築支援までを段階的に実施しています。就職・復職後も「定着支援」という形で継続的に伴走し、一生涯のサポートをさせていただいています。
さらに、私自身が構築してきた精神科医・産業医との密接なネットワークを活かし、必要に応じて最適な医師の紹介を行うことが可能です。こうした医療とビジネス支援の両面からのアプローチにより、再発を防ぎながら、本質的な社会復帰を実現する支援を提供しています。
経営ビジョンと理念
私たちリファイン就労支援センターの理念は、メンタルヘルス不調に苦しむビジネスパーソンの方が「病気になる前より、豊かに自分らしく」生きていくことです。
うつ病や適応障害といったメンタルヘルスの不調は、誰にでも起こり得るものであり、決して“特別な人だけの問題”ではありません。それでも、多くの方が「一度つまずいたら、もう戻れない」と感じてしまう現実があります。私たちは、その固定観念を覆し「何度でもやり直せる社会」の実現に向けて支援を続けています。
ビジネスの現場でメンタルに不調を抱える方々は、真面目で責任感が強く、むしろ社会において高いパフォーマンスを発揮していた人たちが多いです。だからこそ、再発リスクを減らしながら、再び“自分らしい働き方”を取り戻すためには、単なる復職ではなく「自己理解」や「価値観の再構築」が不可欠だと考えています。
そしてもう一つ、私たちの経営ビジョンにあるのは「非効率を受け入れる社会をつくる」ということ。メンタル不調の回復には時間がかかります。一人ひとり異なる背景や気質を持った人間に対して、画一的な効率だけを追い求めるのではなく、手間と時間をかけて丁寧に向き合う姿勢こそが、これからの人材育成や企業のあり方に必要だと考えています。
今後も、私たちはメンタル不調に悩む方々の「人生の再構築」を支え、働き方の新しいスタンダードを社会に提案していきます。
競合との差別化ポイント
リファイン就労支援センターは、「メンタル不調を抱えるビジネスパーソン」に特化した、日本で唯一の支援機関です。そのため、実質的に競合は存在しないと考えています。
全国に3,300以上ある就労移行支援事業所の多くは、主に障害者手帳を取得している方や、通所のハードルが比較的低い方を対象としています。一方、リファインでは、主に休職中の方や離職を余儀なくされた大手企業出身のビジネスパーソンが中心。支援対象の特性も、提供するプログラムの中身も、従来の支援機関とは一線を画しています。
通所エリアにおいても、一般的な事業所が「近隣から通えるか」を基準とする中で、リファインは都内2拠点(上野・五反田)のみの運営ながら、八王子や横須賀といった遠方からの利用者も多くいます。これは、「通勤可能なビジネスパーソン」であることを前提に支援設計しているからこそ可能であり、移動・継続通所が前提となることで、より専門性の高いプログラム提供が実現できています。
また、支援内容においても他社とは明確な違いがあります。認知行動療法に基づいた自己理解・他者理解・相互理解を徹底的に深めていきます。
さらに、リクルート出身を中心とした実務経験豊富なスタッフによるキャリア開発支援も大きな強みです。単なる就職活動のサポートにとどまらず、就職・復職後の定着支援までをカバーし、発症から復帰までのプロセスを深く理解した支援者が、定期面談を通じて長期的に伴走していきます。
単なる「就労支援」にとどまらず、「人生の再構築」を本質から支えている点こそが、リファインの他にはない唯一無二の価値です。
現在注力していること
現在注力しているのは「利用者一人ひとりに徹底的に向き合う支援体制の強化」です。うつ病や適応障害といったメンタルヘルス不調からの回復・復職には、単なる就職支援にとどまらず、自己理解の深化、ストレス対処力の獲得、キャリアの再設計といった本質的なアプローチが欠かせません。こうした支援を確実に実現するため、組織づくりにも力を注いでいます。
リファインはリクルート出身者が多く、医療と人材ビジネスの両面に精通したプロフェッショナルで構成されています。平均年齢は50代前後と高く、豊富な社会経験を持つメンバーが、単なる表面的なアドバイスではなく、利用者の人生に深く寄り添う支援を実践しています。
近年では、30歳前後の若手人材も新たに加わり、プロフェッショナル集団としての組織力を維持・発展させながら、リファインの理念とノウハウを次世代へ継承していく体制づくりも進めています。
リファインは、支援のクオリティを高めるために「組織」そのものを磨き続ける。そんな成長を止めないチームで、これからもビジネスパーソンの“人生の再構築”を支え続けていきます。
今後の展望と挑戦
メンタルヘルス不調の背景には、「職場の人間関係」「仕事の質・量」といった要因が多く存在し、いまや悩みを抱えるビジネスパーソンは増加の一途をたどっています。特にうつ病は再発率が約60%、再々発率は80%以上と非常に高く、たとえ復職できたとしても、再休職に至るケースが後を絶ちません。この問題は本人だけでなく、企業側の損失にも直結しており、社会全体で取り組むべき大きな課題となっています。
こうした現状を踏まえ、リファインでは、回復と社会復帰を一体で支援する仕組みをさらに堅牢なものへと進化させていきます。
「病気になったら終わり」ではなく「壁にぶつかったからこそ、より豊かに生き直せる」。 リファインは、そんな”新たな人生の再構築”を支え続ける存在として、これからも挑戦をしていきます。
メッセージ
うつ病やメンタル不調は、誰にでも起こり得るものです。しかし、いざ不調に陥ったとき、多くの方が「もう終わりだ」と感じてしまいます。私自身も、過去にパニック障害を経験し、長く不調と向き合ってきた一人です。だからこそ、「病気になっても、人生はやり直せる」ということを伝えつづけています。
むしろ、立ち止まったからこそ見える景色、自分と向き合った先に見えてくる新しい道が必ずあります。
リファイン就労支援センターは、ただ職場に戻るのではなく、「その人らしく生きていく」ためのサポートを徹底的に行っています。そして私たちが目指しているのは、「何度でもやり直しができる社会」をつくること。キャリアも人生も立て直せる。それが当たり前の社会であってほしいと願っています。