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“好き”をビジネスに変える力──ドレスと写真で築いた独自ブランド戦略

株式会社ソレアド

代表取締役

里見友梨

経営者のキャリア

私は2005年に大学を卒業したあと、NHKに2年間アシスタントとして勤務しました。その後、より自分に責任のある仕事がしたいと思い、リクルートメディアコミュニケーションズに転職しました。リクルートでは約10年間、新築住宅情報誌やホットペッパーなどの媒体で、制作やディレクションなどを担当しました。

 

そのなかで「自分で何かを立ち上げたい」という気持ちが強くなり、結婚を機に、主人の実家が社交ダンス用のドレスを扱っていたことから、ドレスの仕事を始めました。スペインに住んでいた友人とのご縁もあり、スペインの生地を使った子ども用ドレスの制作を始めたのが、今から10年ほど前になります。

 

それからは全国で撮影会を開催するなど活動を続け、七五三や記念行事の撮影と相性が良いことに気づいて、着物や袴のオリジナルデザインにも取り組むようになりました。その後、フォトスタジオ『リリアの城』を立ち上げ、衣装と写真を組み合わせたスタイルを築いてきました。

 

会社や事業の紹介

ドレスブランド「リリアムネナ」でのドレスの製造/レンタル/販売と、フォトスタジオ『リリアの城』の運営を行っています。特徴的な衣装と高いサービスレベルを大切にしたスタジオです。

 

最初は撮影会を中心に展開していたのですが、徐々に七五三や記念撮影向けの衣装制作にも取り組むようになりました。5年前には着物のオリジナルデザインにも着手し、4年前に千葉県千葉市にスタジオを開業しました。『リリアの城』では、貸切型の撮影や他にはない衣装、経験豊富なスタッフによる対応を大事にしています。

 

また、ドレスブランド「リリアムネナ」としても知られ、「リリアのドレスをを着たいから」と、ドレスを目当てに遠方から来てくださるお客様もいらっしゃいます。「こういう衣装が着たかった」と言っていただけることもあります。さらに、全国のフォトスタジオに衣装をレンタル・販売するBtoBの取り組みも始めており、事業の幅を広げています。

 

経営ビジョンと理念

私が目指しているのは、「スタッフがきちんと生活できる環境を整え、当たり前のことをちゃんとできる会社にする」ことです。この業界では「アーティストだから」「好きだからやってよ」といった風潮が強いのですが、きちんと休暇を取り、正当な報酬を得られる職場にしたいと考えています。

 

また、「この衣装を着たいから」と来てくださるお客様のために、衣装の魅力とサービスの両立も意識しています。日々の撮影現場では、お子さんが楽しく過ごせるように、飽きさせないトークや柔軟な対応を心がけています。そしてもちろん、「もっと多くの人に知ってもらえるブランドになりたい」という思いが強いです。認知を広げ、チーム体制を整えて、堅実に事業を育てていけたらと思っています。

 

競合との差別化ポイント

当社はマス向けのことをやってもあまり意味がない、と私は考えています。『リリアの城』では、特徴的な衣装を展開しています。大手には出せないような、とがったデザインを追求することで、独自の世界観をつくっています。

 

たとえば、男の子の衣装はどこも似たようなものになりがちですが、私はあえて派手で個性的なデザインを取り入れています。女の子の衣装も上質な生地とデザインにこだわり、特徴のあるものを意識しています。

 

また、スタジオの運営方法にもこだわっています。完全貸切制にしているのもその一環ですし、七五三の文化を理解しているスタッフの配置も意識しています。こうした細かな部分が差別化につながっていると思っています。

 

現在注力していること

いま最も注力しているのは、フォトスタジオ『リリアの城』の運営強化と、小学生向けの袴事業の拡大です。スタジオは2時間ごとの貸切制にしていて、お子さん一人ひとりにきちんと向き合える環境をつくっています。今メインで入ってくれているスタッフは、フォトスタジオで20年働いていた方なので、サービスの質が格段に上がったと感じています。撮影現場では、「飽きさせないトーク」や「お子さんのご機嫌に合わせた対応力」が求められます。単に可愛く撮るだけでなく、心を通わせて良い写真を撮るという姿勢が大事だと思っています。

 

袴事業については、近隣の小学生が卒業式での卒業袴の需要があります。昨年度の袴需要も高かったため、今年は早い時期から告知をして昨年の売り上げから3倍に伸ばしたいと考えています。

 

また、スタジオには閑散期と繁忙期の波があるので、それを平準化する目的もあります。また、BtoB販売の拡大にも力を入れており、展示会に向けて少しメジャーな衣装も用意しています。最初は「変わった衣装」をきっかけに入ってきてくださる方が多かったのですが、「選びやすい商品」もあることで、より広い層の方に知っていただけると考えています。

 

今後の展望と挑戦

これからの課題として大きいのが、人材の強化と新しいスタジオの稼働です。現在はスタッフが8名という体制ですが、一人ひとりが本当に大事と日々実感しています。私自身、人の課題が一番大きいと感じていて、誰でも採用すればいいというわけではありません。特に子ども向けの撮影では、ただ”あやす”だけでなく、しっかり目線をもらって良い写真を撮る力や、提案力が求められるので、そういった力を持つスタッフをどう採用し、育てるかが大事です。

 

また、BtoB向けの衣装の幅広い提案はもちろん、久々にBtoC向けの商品の開発にも取り組んでいく予定です。

 

私は今まで現場のことを中心にやってきましたが、これからはもう少し経営にもしっかり目を向けていかなければと思っています。スタッフの生活を守るためにも、収益性のある安定した体制をつくることが私の責任だと思っています。

 

メッセージ

私はけっこう体力があって、しかも諦めない、しぶとい性格だと思います(笑)。また、事業を進めるにあたり、主人の存在もとても大きいです。「君なら大丈夫」といつも背中を押してくれて、本当にありがたい存在です。

 

これから起業しようとしている方には、「味方をつくること」と「しぶとさ」が大切だと伝えたいです。最初はうまくいかないことばかりですが、そういうこともあるよね、と思って、しぶとく続けていれば、きっと道は開けると思います。