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スポーツ×地域×ビジネスで拓く可能性──ルリーロ福岡の持続可能なラグビークラブ経営

株式会社LERIRO

代表

島川 大輝

1. 経営者のキャリア

僕は浦和高校を卒業して、早稲田大学のスポーツ科学部、医科学科に進学しました。そこではアスレチックトレーナーとか、スポーツや医療に携わりたいという思いで集まっているような学科でしたが、僕はあまり興味がなくて、実は入りやすいから選んだ面もありました。ゼミはスポーツ組織論で、学生コーチとして70人くらいの学生にどう伝えるか、どう動いてもらうかに向き合っていたので、組織論には興味を持っていました。

 

ラグビーとの出会いは15歳の高校1年生からです。花園に出たいという思いが強くあり、卒業した後もその夢を追いかけていました。ただ、学校の先生になって教えるつもりはなかったので、教員免許は取らず、外部コーチとして関わってきました。そして、そろそろ花園に行けそうだ、となってきたんですね。

そろそろ次のステージを考えて仕事をしなきゃな、と思っていた時に、税理士法人の先生から「うちに来て勉強しなさい」と言っていただき、福岡でのキャリアが始まったんです。

 

福岡では税理士法人で働いた後、すぐに独立してアカウンティングやファイナンスのコンサルをやっていました。その期間は何でも引き受けていて、自分の関心のままに動いていた感じです。

 

2. 会社や事業の紹介

ルリーロ福岡は、2022年4月に立ち上げました。

 

一番最初のきっかけは、吉瀬晋太郎が「高校日本一になりたい」と言ったことです。

吉瀬晋太郎は、熱量あふれる指導者で、当時「浮羽究真館高校を花園で日本一にする!」ことを掲げていました。僕はその言葉に興味を持って、グラウンドを見に行ったり、試合をこっそり観に行ったりしていました。そして2020年11月頃に、コーチの依頼を受けたのが本格的な関わりの始まりでした。僕はもう現場に立つのは違うと思っていたので、コンサル的な立場から課題を分析して、戦略的に関わるようにしていました。

 

ただ、高校のラグビーチームがいくら強くなっても、高校を卒業した選手は、みんな関東や関西の大学に進学してしまう。いつまでたっても「うきはには吉瀬晋太郎しかいない」状況が続いていました。

そこで「トップチームを作ろう」という話になりました。ラグビーが本当にやりたかったら、その場所を求めて、みんなうきはに来ると考えたんです。

 

地域の若者から大人までがつながるピラミッド型の組織を目指してルリーロ福岡を立ち上げました。うきはに生まれた子供たちが、大人になっても、一緒に大きな夢を追えるって、素晴らしいじゃないですか。

 

その後、トップチームが2つ消滅するという出来事が重なり、「今やるしかない」というタイミングが巡ってきて、創業に至ったわけです。

 

3. 経営ビジョンと理念

ルリーロ福岡のビジョンは「We have wings.」です。これは「俺たちには翼があるんだ」という意味で、何回でもチャレンジできるという思いが込められています。僕自身、20代をニートで過ごして、社会に出遅れましたが、だからこそ「いつでもどこでもチャレンジできる」ということを証明したいんです。

 

また、僕たちの行動指針には「つなげ回せ」という言葉があります。ラグビーを通じて人と人、地域と地域をつなげて、広げていく。ビジネスだけでも、スポーツだけでも成り立たない、二軸の意識を持ってやっていくことが大事だと思っています。楕円形のラグビーボールのように、中心が二つあることを意識して、事業と競技を両立させたいという思いを込めています。

 

4. 競合との差別化ポイント

僕はあまり他のチームのことを知らないんです。自分の性格的に、ゴールが見えたらやる気がなくなるので、あえて知らないようにしています。でも、自分たちの強みは「地域」だと思っています。地域とのつながりが強い。それが最大の差別化ポイントです。

 

他のチームと比べるというよりも、いい取り組みはどんどん取り入れるスタンスでやっていて、「いいですね、じゃあやります!」とすぐに動けるフットワークの軽さも強みです。誰でもできるようなことをやっていると、「なんでこんなこと俺がやらなきゃいけないんだ」って思っちゃうタイプなので、自分を飽きさせないためにも、高いゴールを常に設定しています。

 

5. 現在注力していること

今一番注力しているのは、お金を稼ぐことです。人生で一番お金が欲しいと思っていて、やりたいことをやるためには資金が必要なんです。

 

弊社の売上は、競技性・地域性・事業性の3つの柱で成り立っています。まず競技性では、スポンサーやチケット、グッズ、リーグの分配金などが収益源になります。ただ、ここだけだと赤字で回らないんですよ。

 

二つ目が地域性で、行政や国からの委託事業や補助金です。スポーツチームだからこそ得られる収益があります。

 

そして三つ目が事業性。ここが一番大きくて、フォトスタジオや整骨院を運営しています。これは「ラグビーで飯を食う」ために、できるだけ定義を広げようという試みでもあります。

 

例えば、フォトスタジオではプロカメラマンを雇っていて、ラグビーの広報も担当してもらっています。平日は子ども向けの写真館で仕事をしながら、ラグビーに関わってもらう形です。整骨院も、トレーナーが日中は地域のおじいちゃんおばあちゃんのケアをして、夜はチームの選手を診るという二刀流の働き方をしています。

 

こうした事業によって、人件費をまかなったり、活動費を生み出したりしていて、単なるスポンサー依存型の運営ではない、持続可能なモデルを作ろうとしています。

 

6. 今後の展望と挑戦

将来的には「世界で一番稼げるクラブ」になりたい。吉瀬晋太郎が「日本一」と言っているので、僕は「世界一」を目指そうと思っています。

 

スポーツの勝敗だけにコミットすると天候や怪我など予測不能な要素に左右されるので、企業としては売上や利益を追いかけるのが本筋だと思っています。その中で、やりたいことをやれる環境を作ることが大事だと考えています。

 

スポーツで飯が食えないから他の道に行く、という選択をせざるを得ない人が多いのが現状ですが、僕はその価値観を変えたい。だからこそ、ルリーロ福岡がロールモデルにならなければならないし、そのためには本気で稼がないといけないと思っています。

 

これからはパートナー企業と一緒に事業をつくる「事業共創」にも力を入れていきたいです。スポンサーではなく、実証実験の場になったり、共に収益を上げていくモデルを築くことで、さらに広がりのあるクラブ運営を目指していきたいです。

 

7. メッセージ

やりたいことにはチャレンジしたらいいと思うんです。We have wingsです。

 

ほんとにできるのかって、100万回くらい聞かれました。本当に人は集まるのか。本当にお金は集まるのか。本当にチームはできるのか。リーグに参戦できるのか。持続可能なのか。潰れないのか。でも、そんなの知らねえよって話じゃないですか(笑)。「やれるかじゃねえんだよ、やるんだよ」って。あったらいいなって思うからやるんです。