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未経験から代表へ──挑戦を重ねてたどり着いた人と事業を育てる経営のかたち

株式会社 Leading Communication

代表取締役

井上光

経営者のキャリア

22才の時、業界未経験のまま広報の仕事に飛び込んだのがキャリアの始まりでした。最初はタイピングもできない状態で、とあるホストクラブの本社に広報として入社したんです。今では大きなグループ組織になっていますが、当時はまだ2店舗ほど。雑誌やメディアに露出するための売り込みを担当して、なんとか世の中の方に認知してもらおうと動いていました。

 

1年くらい広報の仕事をしていた頃、事業の拡大に向けて次はアパレルブランドの立ち上げを任されることになりました。当時はネット販売市場が勢いのある時代だったこともあり「楽天ショップの店長やってみて」と、右も左もわからないまま楽天ショップの運営を担当することに。商品写真の撮影から加工、ページ作成、プロモーションまで全部一人でやっていました。

 

その後も「海の家を立ち上げるぞ」「人事制度を整えてほしい」「ライブ配信アプリのプラットフォームを作ろう」という形で、会社から毎年のように新しいチャレンジが舞い込んできました。どれも初めてのことばかりでしたが「とりあえずやってみよう」と、チャレンジを続けてきました。

 

ライブ配信アプリ事業が軌道に乗ったタイミングでSNSマーケティング事業を立ち上げることになり、ライブ配信アプリ事業から今の会社であるLeading Communicationの立ち上げに参画することになりました。代表になったのは2023年の12月で、つい最近のことです。振り返ってみると、何をやるにも「やったことないけどやってみる」がベースにあります。うまくいかないことも多かったけれど、逃げずに向き合い続けてきたことは自分の中で一つの軸になっています。

 

 

会社や事業の紹介

株式会社Leading Communicationは、2020年に立ち上げた会社です。ちょうどTikTokが日本でも少しずつ広がり始めたタイミングで「これから絶対に流れが来るな」と、TikTokを中心に縦型ショート動画を活用したマーケティングに注力してきました。

 

最初はクリエイターを育てる“プロダクション事業”からスタートしました。どうすればTikTokで伸びるか、どうしたら影響力を持てるかを試行錯誤しながら、所属する子たちと一緒に伸ばしていくことに全力を注いでいました。最初の頃は売上のことよりも「影響力をつけること」にフォーカスしていたと思います。

 

そこからクリエイターにPR案件が入ってくるようになって「よし、ここからは営業にも力を入れていこう」と。初めての営業では企業さんや代理店さんをまわって、PR投稿やSNS運用を提案していきました。中でもファミリーマートさんのアカウント運用を任せてもらえたことは大きな転機でした。そこからピザハットさんや東急プラザさんの支援に入らせていただくなど、他の企業にも評判が広がっていきました。

 

今ではTikTokだけでなく、InstagramリールやYouTubeショートも含めて、縦型ショート動画を活かしたマーケティング全般を支援しています。クライアントの課題に応じて、PR投稿、アカウント運用、広告運用までを一気通貫でサポートできるのが、僕たちの強みです。

 

「ただバズらせる」ではなくて、「企業の課題をきちんと解決する」。そのために、社内の制作チームと連携して、マーケ視点のクリエイティブを丁寧につくり込んでいます。

 

 

経営ビジョンと理念

僕たちのビジョンは「個が消費される世の中を変える」というものなんです。これは、創業者である会長の細矢が掲げた言葉なんですが、僕自身もすごく共感していて、今もその想いを受け継いで経営しています。

 

この“消費”って言葉は、いろんな場面に当てはまると思っています。たとえば芸能界やインフルエンサーの世界では、一時的に脚光を浴びても、旬が過ぎると一気に見なくなることって多いじゃないですか。結局、「影響力を消費されて終わる」というケースがすごく多いなと思うんです。

 

でも、せっかく得た影響力なら、使い捨てにせずに“事業”としてちゃんと育てて、長く稼いでいける形にしていきたい。うちのプロダクションも、ただフォロワーを増やすためじゃなくて、その人の夢やビジョンを一緒に叶えていける環境をつくりたい、と思ってやっています。

 

これはクリエイターに限った話じゃなくて、弊社で働いてる社員にも同じことが言えると思っています。サラリーマンも「いずれどこかに使い捨てられる」みたいな雰囲気、まだまだあると思うんですよね。だけど僕はそうじゃなくて「ここで自分のキャリアを叶えられる」「この会社で夢が持てる」と思える場所にしたい。

 

だから、日々のフィードバックもとても大事にしてます。うちでは“LCらしさ”という価値観をちゃんと言語化していて、入社時に共有をします。日々の中で「あの行動はLCらしいかどうか?」という視点でお互いに話すようにしています。大きな制度というよりは、日常の会話で価値観がすり合っていく会社でありたいな、と。

 

消費されるのではなく「自分の価値を“育てていける”会社」にしたい、それが僕たちのビジョンです。

 

 

競合との差別化ポイント

Leading CommunicationはTikTok領域では後発の方なんです。僕たちがスタートした時には、すでにたくさんの企業がTikTokに参入していて、クリエイターもたくさん抱えてるようなプロダクションがいくつもありました。だからこそ「じゃあ自分たちが選ばれる理由って何だろう?」ということを、ずっと考えてきました。

 

一番の強みは、“クリエイティブの質”だと思っています。SNSはバズればOKと思われがちなんですが、ただ再生数を取るだけでは意味がない。クライアントが何を目的にしていて、ユーザーにどういうアクションをしてほしいのか。それをちゃんと考えてつくるのが、僕たちがやっている「マーケ視点のクリエイティブ」です。

 

社内には撮影から編集までできる制作チームがいて、投稿する動画はすべて社内で完結しています。その上で「こうしたらバズるよ」ではなくて「それってクライアントの目的に合ってる?」という会話が制作の段階から交わされるのがうちのスタイルです。再生数よりも“意味のある再生数”を重視する。この価値観は全員に共通しています。

 

もちろん、時代に合わせてTikTokやInstagramのリール、YouTubeショートなどSNSの媒体は変わっていきます。でも、どんな時代でもブレずに「企業の課題に向き合う」「人の想いを大切にする」というところは、弊社の一番の強みであり、他社との違いだと思っています。

 

 

現在注力していること

今、特に力を入れているのは、“クリエイターの育成”と“縦型ショート動画を中心としたSNSマーケティング”の両軸です。この2つが僕らの会社の土台でもあり、これからも伸ばしていきたい部分です。

 

クリエイターの育成に関しては、ただ「フォロワーを増やそう」とか「バズろう」という話より、その人自身がどんな方向に行きたいのか、どのような未来を描いているのかというところから一緒に考えるようにしています。こちらから何でも用意してあげるというより、本人の想いややりたいことを引き出して、それに対してロードマップを描いていく。例えば「半年後にはこういうジャンルの企画に挑戦しよう」「1年後には企業案件をこう増やそう」というような具体的なプランを一緒に立てて、走っていく感覚です。

 

また、最初にクリエイターさんとお話しするときも、見た目や数字より「この人は自分の足で走れる人かどうか」というところも重視しています。本人にエンジンがあるかどうかが、長く続けられるかどうかの分かれ道なんです。

 

もう一つは、SNSマーケティングの深化です。僕らが取り組んでいるのは、ただ広告を打って終わりではなく、認知→興味→購買→リピート→ファン化までの“ダブルファネル”をSNS上でどうつくるかということ。TikTokで話題をつくって、気になった人がInstagramで詳しく知って、最後にECで買ってもらう、というような一連の流れを設計していくんです。

 

そのために、日々施策も進化させていて「どこまで企業に寄り添えるか?」を考えながら、新しいサービス開発や運用体制の強化をしています。

 

クリエイターの夢を叶えること。クライアントの課題を解決すること。この2つを実現できるよう、一つひとつ丁寧に取り組んでいます。

 

 

今後の展望と挑戦

僕たちが目指していきたいことの1つめとしては「クリエイターの影響力を軸にした事業展開」です。ただSNSマーケの代理店として売上を上げるのではなく、クリエイターの可能性を起点に、いろんなビジネスを一緒につくっていける会社でありたいと思っています。

 

たとえば、うちに所属している、いよちゃんというクリエイターがいるんですが、本人が「将来は自分のブランドを持ちたい」「エンタメを届けたい」という夢を持っていて。だったら次は楽曲を作ってみようか、というように目標に向かったプロジェクトが今動いていたりします。そんなふうに、クリエイターの「やってみたい」を事業として形にしていくのが、僕らの次のチャレンジです。

 

その延長線上には、社員のキャリアもあります。「いよちゃんと一緒にやるプロジェクトの事業責任者になる」とか「新しく立ち上げた子会社の社長になる」とか。会社の中にいろんな事業が生まれていけば、社内の人たちもそれぞれの道で夢を叶えていける。そういう土壌をつくっていきたいんです。

 

2つめの挑戦は、「AIテクノロジーの活用」です。現在のSNS運用は、まだまだ人の手に頼っている部分が多いですが、AI技術の進化によって自動化できる領域もどんどん広がってきています。うちでも最近、AI領域に強いメンバーが加わり、今後ディープフェイク技術を活用したバーチャルモデルの導入も視野に入れています。これにより、顔出しが難しいクライアントでも対応可能な動画制作の幅が大きく広がります。

 

ただ人手を減らしたいのではなくて、人間がやるべきところは人間がやる、テクノロジーに任せられるところは任せる。そのバランスをうまく取って、もっと質の高いマーケティング支援をしていきたいと思ってます。

 

クリエイターと社員、それぞれの「やりたい」を形にしながら、新しい価値を世の中に提案していく。それが僕らのこれからの挑戦です。

 

 

メッセージ

僕自身、今でこそ会社の代表という立場にいますが、もともとはパソコンも触ったことがなく、タイピングすらできない状態からのスタートでした。特別なスキルがあったわけでもなく、器用なタイプでもありません。ただ一つ、「逃げない」ということだけは、ずっと大事にしてきました。

 

たくさんの課題にぶつかる中で、いつも「向き合う以外に解決策ってあるのか?」と自分に問いながら、一つひとつ正面から取り組んできました。もちろん失敗も多くありましたが、それでも正面衝突するくらい真っすぐ向き合い続けた結果、気づけばその積み重ねが今の自分をつくる土台になっていました。

 

自分の価値は、誰かに決められるものではなく、自分の中で育てていくものだと思っています。僕たちの会社も、そうした想いを持つ人と共に、これからも挑戦を重ねていくつもりです。