「悩むを減らす」──時価総額100兆円を目指す若き経営差の信念
株式会社カケコム
代表取締役社長
森川照太
私のキャリア
私はハワイ生まれ、兵庫育ちです。私が生まれるとき、父は仕事の関係でハワイに移住していました。父は曾祖父が立ち上げた蚊取り線香や入浴剤の会社の3代目社長でした。そして母親も不動産管理会社の社長です。そのため、幼少期からビジネスへの関心が強く、小学生の頃には「いつか自分も事業を起こしたい」と考えていました。
もちろん、順風満帆だったとは言えません。父の会社が業績不振に陥ったり、最終的には大手企業に買収されたりと、経営の厳しさも目の当たりにしてきました。中学生の頃には、父が立ち上げたWEB制作会社でWEBデザインやコーディングなどを手伝いながらお小遣いをもらっていました。ITに興味を持つと同時に、「実力をつけたい」という思いを強く持つようになりました。
大学に進学した当初は「30歳までに起業しよう」「それまではコンサルか商社で修行しよう」と計画していたのですが、大学時代の経験が自分の価値観を大きく変えたなと感じています。もともとグローバルな環境には興味があったので、全ての授業が原則英語で海外留学が必須に近い早稲田大学国際教養学部に進学したのですが、留学先で大手企業に就職する以外の多様な選択肢を持ったアメリカの学生達を見て、「スタートアップ創業など大手就職以外の選択肢も考えよう。早くチャレンジしたい。」という気持ちが強まりました。また、インターンとしてベンチャーキャピタルで働いたことも大きかったです。今でこそ誰もが知る有名企業のメルカリやBASE、CAMPFIRE、dely。ベンチャーキャピタルの立場で彼らや他にもたくさんのスタートアップの黎明期を間近で見ることができました。こんなことをいうと怒られてしまうかもしれませんが、良い意味で経営者も一人の普通の人間で、悩み、迷い、失敗をしながら前に進んでいるんだということを肌で感じられたことは、自分のキャリアに大きな影響を与えていると思います。
その後、一度はITスタートアップのメッカであるアメリカのシリコンバレーを見てみたい、いっそのことシリコンバレーで起業することも考えようと思い立ち、当時の所持金10万円だけ握りしめて渡米しました。生活は苦しかったですが、運よく現地のベンチャーキャピタルで働かせてもらうことができ、当時世界最先端のベンチャー企業を見る機会にも恵まれました。
1年ほどアメリカで仕事をした後、帰国しました。最終的に日本で起業することにしたのは、月並みですが日本という国が良い国で今後もさらに良くしていきたいと心から思っていたからです。日本からグローバルトップ企業を創るという理想を掲げて、24歳で起業に踏み切りました。
会社や事業の紹介
カケコムを立ち上げたきっかけは、人が困ったときにここにいけば最速で最適な解決策に辿り着けるというウェブサービスをつくりたいという思いからです。起業前からソフトバンクの孫さんの影響を受けて、100ぐらいのビジネスアイデアを出して自分で点数をつけていたのですが、最終的にはビジネスアイデアとして上げていなかった「カケコム」が一番しっくりくるサービスでした。もちろん、なんとなくで選んだわけではありません。起業当時、弁護士業界は国内市場約1兆円であるにもかかわらず、主な上場企業は1社ほどしかありませんでした。また、その企業も当時の時価総額は約150億円、年間売上高も約10億円。海外においても競争が異常なまでに起こっていない。これから大きな変革期を迎えIT化の波も来る状況下において、今の時代により合う仕組みを提供できればこの業界において日本発世界一への勝ち筋があるのではと感じたためです。
私たちのサービスは、弁護士との相談を必要としている人たちが、迅速に解決策を見つけられるようにサポートするものです。弁護士相談は緊急性が高いことが多いので、その時にすぐ対応できるプラットフォームが必要です。しかしながら、業界的にテクノロジーの活用が遅れているという課題がありました。だからこそ、私たちは法律相談プラットフォームとして、課題が多い「予約」や「決済」をテクノロジーで進化させ、ユーザー体験を向上を目指し続けています。今後は、弁護士業界だけでなく、様々な問題を迅速に解決できるサービスラインの拡大も視野に入れています。
経営ビジョンと理念
私が一番大切にしているのは「悩むを減らす」という理念です。これは、人生をかけても取り組み続けたいテーマだと思っています。今は弁護士に特化したサービスですが、これをコアとして将来的にはもっと広い範囲で、いろいろな悩みを抱えた人たちをサポートするサービスにしていきたいと思っています。
カケコムのメンバーも、この理念に共感してくれていると思いますし、いいチームだと思っています。みんなが同じ方向を向いていると感じています。「悩むを減らす」という理念の実現、そして日本からグローバルトップ企業を創るという夢の実現に向けて、プロダクトラインを増やし、世の中により大きく、より良いインパクトを生み出していきたいです。
競合との差別化ポイント
私たちのサービスの強みの一つは「予約&事前決済機能」です。カケコムではいち早くこの機能を取り入れました。これによって、ユーザーが弁護士に迅速にアクセスできるようになり、よりスムーズな相談が可能になりました。弁護士向けのサービスをリリースして5年、ネット予約機能のリリースから2年が経ちましたが、まだこのような仕組みを導入している企業はありません。
他社がやっていないとは思っていませんが、私たちは特に「ユーザーファースト」を徹底しているという自負があります。私たちはあくまでもユーザーである相談者により良い体験を提供することを第一に考えています。もちろん自分のカレンダーをWEBで公開することに抵抗を感じる弁護士の方はいらっしゃいます。だからこそ、ネット予約は普及し辛かったのかもしれません。ですが、強力な先駆者がいる中、最後発の私たちが戦うためには、ネット予約に賭けるしかありませんでした。予約の件数は一時的にはピーク時の10分の1まで減少しましたが、自分自身も心から使いたいと思えるほどに便利になりましたし、弁護士の方からも「質の高い相談が集まるようになった」という声をいただいています。ネット予約に注力するという決断には大きな意味があったと思いますし、カケコムをカケコムたらしめる要素だと思っています。
現在注力していること
弁護士に留まらず、他の業界にもサービスを展開していこうと考えています。弁護士領域で培った「予約機能」は単なるスケジュール管理ではありません。「予約」と「事前決済」がセットになっています。前払いしても良いと思えるような付加価値の高いハイエンドなサービスに需要があるのではないかと考えています。まだあまり声を大にして言えないのですが、例えば、コンサルタントや金融専門職などの専門家に対して価値を提供できないかと準備を進めています。
さらに、事前問診システムも導入していきたいと考えています。ユーザーの悩みをボットなどでヒアリングし、AIなどの技術や様々な仕組みも駆使して最適な専門家をマッチングする機能を作ろうとしています。こうした取り組みを進めていく中で、より多くのユーザーに価値を提供し、ミッションをより高いレベルで実現できるサービスにしていきたいと思っています。
今後の展望と挑戦
弊社のミッション実現を目指す過程でAIを活用したロボット開発にも挑戦してみたいです。例えば、食器洗い・洗濯・掃除などの家事代行関連やヘアサロン向けのロボットを作り、人がやらなくても良い作業を効率化していくなど、AIを活用したロボット領域でナンバーワンを目指すこともやりたいです。もちろん、これを達成するには長い道のりがありますが、夢は大きく持って、それに向けて一歩ずつ進んでいくつもりです。私が大切にしているのは、失敗を恐れずに挑戦し続けることです。失敗は必ずしも悪いことではなく、そこから学んで次に進むためのステップだと思っています。
私たちのビジョンの実現には5年や10年では足りません。50年や100年後の世界を見据えて取り組んでいく必要がありますし、長期的な目線を持って継続することも重要だと思います。長期的に継続することで、経験やネットワークが複利で積みあがり、大きな成果に繋がっていくと信じています。最終的にはこれからさらに急成長していくであろうテスラやエヌビディアのような企業と肩を並べるような、時価総額100兆円規模の企業を創るまでチャレンジを続けたいです。日本発の経営者として、ロールモデルのひとりになれたらと思っています。
読者へのメッセージ
日本という枠にとらわれず、グローバルな視点を持って挑戦してほしいということです。失敗や挫折を恐れず、むしろ過程として楽しむ気持ちで挑戦することも大切だと思います。
こんなことをやりたいと思ったときに、周りから「そんなことはできない」と否定されることもあると思います。起業を志したことがある方はもちろんですが、どんなチャレンジであっても、周りに流されてあきらめるのはもったいないと思っています。やりたいことがあるなら、人が決めた限界に縛られず、どんどん大きなチャレンジをしていくべきです。普通の挑戦ではなく、もっと大胆に挑戦していくこともいまの日本においては特に重要だと思います。青臭いかもしれませんが、このような考えに共感してチャレンジする方が増えたら、日本はこれからも良くなると信じています。
まとめ
今回のインタビューを通して、カケコムや森川さんが大切にしている「悩むを減らす」という理念と、それに基づいたサービス展開の意図が明確に伝わりました。彼の経営スタイルは、幼少期からのビジネス環境や留学経験、シリコンバレーでの挑戦を通じて培われたグローバルな視点が色濃く反映されています。また、弁護士サービスに留まらず、予約や決済機能といったテクノロジーを活用した他業界への横展開への意欲も強く感じられました。
彼が掲げる将来的なビジョンは、AIやロボット開発など大胆な挑戦に向けられています。その目標は、単に日本国内での成功に留まらず、時価総額100兆円規模のグローバルトップ企業を築くこと。このような長期的な視点での挑戦を楽しむ姿勢は、多くの中小企業経営者にとっても刺激となるはずです。失敗を恐れずに挑戦し続ける彼の姿勢は、これからのビジネスリーダーにとっても大いに参考になるでしょう。
森川さん、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました。