地方から新しい暮らしをつくる。「Next Local, New Life」を掲げるコラボハウスの歩み
1.いままでのキャリアについて
私は新卒で、鉄鋼メーカーに入社しました。大学院では機械工学を専攻していたため、入社後は機械系エンジニアとして製造領域に携わり、約5年間現場で経験を積みました。
その後、外資系コンサルティング会社に転職し、約7年間経営コンサルティングの仕事をしてきました。コンサルティング会社で得た最も大きな学びは、思考のプロセスです。戦略を考える、課題を特定する、といった抽象度の高いテーマに対して、それをどのようにタスクへ分解し、どう進めれば答えに辿り着けるのか。何をもって「答えが出た」と言えるのか。そうした仕事の進め方の型は、今の経営においても大きく生きていると感じています。
一方で、コンサルタント時代に強く印象に残っている経験があります。ある企業の役員の方へ新規事業の提案をした際、「君の言っていることは正しい。でも、できない。」と言われたことがありました。提案の内容は論理としては正しかったのですが、その会社では過去に前社長である会長がその方向性をやめる決断をしていたのです。組織の意思決定の構造を踏まえると、その提案は実行できないものでした。どれだけ正しいことを言っても、組織の力学や人の感情を理解していなければ物事は前に進まない。この経験は私にとって大きな学びでした。
そこから私は、「論理だけでは人は動かない」ということを強く意識するようになりました。では何があれば人は動くのか。その問いを考え続ける中で辿り着いたのが、アリストテレスの弁論術です。人を動かす要素として、エトス(信頼)、パトス(情熱)、ロゴス(論理)の三つがあるという考え方です。信頼されている人が、情熱を持って、論理的に語ることで人は動く。この三つのバランスを意識することが重要だと理解しました。
コンサルティングの仕事を続ける中で、次のキャリアについても考えるようになりました。いずれは自分自身で事業を持ちたいという思いもあり、次の挑戦の機会を探していた時期でもありました。
そんな時に知人を通じて、コラボハウスという会社を紹介してもらいました。当時のコラボハウスは、二人の創業者が中心となってブランドを築き上げてきた会社でした。お二人とも非常にカリスマ性のある経営者で、その強いリーダーシップで事業を成長させてきた会社です。
一方で、その強い求心力ゆえの課題も生まれていました。権限や影響力が創業者に集中していたため、後任が育ちにくい構造になっていたのです。会社としては順調に成長していたものの、「この先も持続的に成長していけるのか」という不安が組織の中に生まれていた時期だったと聞いています。
ちょうどその頃、社員数が100人を超えるタイミングでもありました。いわゆる組織の「100人の壁」に直面していた時期です。そのような背景から、今後さらに会社を成長させていくために新しい経営体制をつくる必要があるという議論が生まれ、次の成長を担う経営人材を外部から迎えようという流れになりました。そのタイミングで私に声をかけていただき、2024年10月にコラボハウスへ入社し、代表に就任しました。
2.会社や事業の紹介
コラボハウスは2008年に創業された住宅会社です。創業者二名によって立ち上げられ、「設計士とつくるデザイナーズ住宅」」というコンセプトのもと事業を展開してきました。
私たちのビジネスモデルは、一般的な住宅会社とは大きく異なります。まず住宅営業がいません。さらにモデルハウスもありません。加えて、自社で土地を保有することもほとんどしていません。
一般的な住宅会社では、総合展示場にモデルハウスを建て、そこに営業担当がいてお客様へ会社の魅力を説明し、契約につなげ、その後設計士へ引き継ぐという流れが多いと思います。一方、コラボハウスでは設計士が直接お客様の話を伺い、その場で設計を考えていくスタイルを取っています。
この仕組みにはお客様にとって二つのメリットがあります。一つは価格の構造です。営業人件費やモデルハウス、土地などは住宅会社にとって大きな固定費になります。そしてそれらは最終的に住宅価格へ反映されます。私たちはそれらの固定費を持たないため、同じ価格帯でも家づくりそのものにより多くの価値を配分することができます。
もう一つは設計の精度です。営業から設計へ情報を引き継ぐ構造では、どうしてもお客様の想いが途中で抜けてしまうことがあります。設計士が直接ヒアリングすることで、その場で想いを図面へ反映することができるため、より満足度の高い家づくりにつながります。
また会社側の視点でもメリットがあります。営業人件費、モデルハウス、土地といった大きな固定費を持たないため、損益分岐点を低く抑えることができます。結果として出店投資も抑えられ、投資回収も早くなります。そのため小規模な商圏でも採算を確保することが可能になっています。
3.経営ビジョンと理念
コラボハウスには「すべては友人のために」という行動指針があります。これは、目の前のお客様が本当に大切な友人だったとしたらどのような対応をするか、という基準で行動するという考え方です。
例えば、本当に大切な友人であれば無理な資金計画は勧めないと思います。将来の収入やライフイベントを考えたときに無理なローンになるのであれば、「それはやめた方がいい」と言うはずです。私たちはお客様に対しても同じ基準で向き合うべきだと考えています。
また住宅業界では、契約後にオプションを追加していくことで価格が上がっていくケースも少なくありません。しかし私たちは、お客様の暮らしに本当に必要なものだけを提案することを大切にしています。必要のないものは勧めない。これも「友人のため」という考え方から来ています。
この価値観は長い時間をかけて組織に浸透させてきたものです。社内では考え方研修などを通して理念が共有されており、スタッフがマニュアルではなく、自発的に休日にお客様の家具選びに同行させて頂いたり、引き渡しの際に似顔絵をプレゼントしたりすることもあります。そうした行動の一つひとつが、この理念が組織に根付いている証だと感じています。
私自身も、この価値観を大切に引き継いでいきたいと考えています。
4.競合との差別化ポイント
コラボハウスの差別化は、やはりビジネスモデルそのものにあります。営業を置かない、モデルハウスを持たない、土地を保有しない。この構造により固定費を大きく抑えることができます。
固定費が低いということは、損益分岐点が低いということです。そのため出店コストを抑えることができ、投資回収も早くなります。結果として、小規模商圏でも事業として成立させることができます。
実際に私たちは秋田県や高知県といった地域にも出店しています。これらの地域は人口減少が進んでいる地域でもありますが、私たちのビジネスモデルであれば一定の需要が見込める限り事業として成立させることが可能です。大手が撤退するエリアでも戦えるモデルであることが、私たちの強みだと思っています。
また営業を置かない代わりに、マーケティングには非常に力を入れています。SNSやWeb広告などのデジタルマーケティングを活用し、完全反響型で集客を行っています。マーケティング統括には大手広告会社出身の人材が入り、外部の専門家とも連携しながら体制を強化しています。
さらに公式サイトのコンテンツにも力を入れています。お客様がサイトをご覧になったときに、「コラボハウスに頼むとどのような家ができるのか」を具体的にイメージできることを大切にしています。ここなら任せてもよさそうだと感じていただけるようなコンテンツ設計を重視しています。
5.現在注力していること
今、最も注力しているのは採用と人材育成です。会社が成長していくためには人材が不可欠です。ただ人数を増やすだけではなく、新しく入ってくれる仲間をきちんと受け入れ、成長し、活躍できる環境を整えることが重要だと考えています。
具体的には、人事制度の設計やマネジメント人材の育成、オンボーディングの仕組みづくりを進めています。また、社内のノウハウや経験を言語化し、組織として共有できる形にしていく取り組みにも力を入れています。個人の経験に依存するのではなく、組織全体で知見を積み上げていくことが大切だと考えているからです。
一方で、私自身にも反省があります。代表に就任したタイミングは、社員にとって不安を感じやすい時期です。どんな人間なのか分からない中で、「会社がどこへ向かうのか」が見えないと、不安はどうしても大きくなります。
しかし当初の私は、集客や制度といったオペレーション課題の解決を優先してしまいました。もちろん必要な取り組みではありましたが、それだけでは組織の未来像を十分に共有できていなかったと感じています。この点は大きな学びになりました。
それ以降は、対話と発信を仕事の中心に置くようにしています。現場へ足を運び、食事も含めて腹を割って話す時間を意識的につくるようになりました。
コンサルタント時代の自分がロゴス(論理)中心だったとすれば、今はエトス(信頼)をより大切にしています。信頼関係が土台にあってこそ、組織は前に進んでいくのだと実感しています。
6.今後の展望・挑戦
私たちのビジョンは「Next Local, New Life」です。地域に人の流れを生み出し、地方に住みたいと思う人を増やしていくことを目指しています。住宅会社という枠を超えて、地域の活性化に貢献していきたいと考えています。
その取り組みの一つとして、愛媛大学との連携があります。大学のネーミングライツを取得し、建築学コースの共同研究やフィールド実習の場を提供していく予定です。未来の建築家を育てる取り組みにも関わっていきたいと考えています。
また地域企業と連携し、地域の魅力を発信する取り組みや、旅館事業の再生支援などにも挑戦していきたいと考えています。設計の力を活かして地域を元気にする取り組みを広げていきたいです。
7.読者へのメッセージ
私が大切にしている言葉に「悲観は気分、楽観は意志」というものがあります。経営をしていると、うまくいかないことの方が多いと感じます。それでも経営者が悲観してしまうと、その空気は組織全体に広がってしまいます。
だからこそ私は、気分ではなく意志として前向きでいようと意識しています。どんな状況でも楽観的でいるという姿勢を持つことが大切だと思っています。地方で新しい挑戦をすることには不安も当然あります。それでも前を向いて進み続けることが未来につながるのではないかと考えています。