「アルバイトから役員に」――ママたちの”自立”を支えるキャリママのリーダー
私のキャリア
私は小さい頃、キャビンアテンダントや幼稚園の先生に憧れていました。弟や妹、いとこの面倒を見るのが好きで、自然と「誰かをサポートする仕事」に興味を持つようになったのだと思います。母親がフィリピン人ということもあり、小学校と中学校は日本で、高校と大学はフィリピンで過ごしました。フィリピンの学校は学力が非常に高く、留年や飛び級も珍しくない環境で、自分も学び続けることの重要性を感じました。キャビンアテンダントになるという夢は持ち続けていたのですが、どこでも働けるスキルを身に着けたいと考え、大学は幼児教育を学べる環境を選びました。
大学卒業後は日本に帰国し、幼稚園で2年間勤務しました。当時の幼稚園や保育園はいわゆるブラックな労働環境が当たり前でしたが、幼稚園の仕事はとても好きでした。子どもたちの成長を間近で見られる喜びや、卒園のときの達成感は今でも忘れられません。とはいえ、3回連続で20連勤といった過酷な労働環境だったことも事実です。30代や40代になってもこの仕事を続けられるのか不安に思っていましたし、保育業界しか知らない自分に少し負い目を感じていました。もっと広い世界を見てみたいと考え、IT業界に転職する決断をしました。
転職先では、データセンターでのエンジニアサポートのほか、英語が話せたため外資系企業でのアテンド業務などに携わりました。プログラミングは案件として関わる機会こそ少なかったのですが、数学が苦手だった私にとって、エンジニアの仕事で「答えが返ってくる」という感覚は新鮮で、非常に楽しく仕事ができていたと思います。当初はそこまで長く勤めることを想定していなかったのですが、6年間もお世話なるぐらいには、やりがいをもって働けていたのかなと感じています。
結婚・出産を経て、仕事に復帰するタイミングでキャリママの前身であるチアマザーズに出会いました。働き慣れた環境に戻ることもできたのですが、結果として新しい会社で仕事をしようと決断したのは、いろいろなことを経験してみたいという想いが強いからかもしれません。「その業界やその仕事が好きならいつでも戻れる。だったら新しいチャレンジをしてみたい。」そんな価値観を持っていたからこそ、若くして頑張っている女性社長である上田に魅力を感じました。
最初はアルバイトからのスタートでした。テレアポ業務は未経験で、なかなか成果が出ず、苦しい時期もありましたが、他の社員ができないことにも積極的に取り組み、徐々に周囲の人から認めてもらえるまでになりました。入社3年目で役員に就任するとは思ってもいませんでしたが、「バイトから役員になれる」というモデルケースとして、今後もママたちに新しい可能性を提供していきたいと考えています。
会社や事業の紹介
株式会社キャリママは、「ママたちが活躍できる社会をつくる」ことを目指して、営業代行や事務代行を中心にBPOサービスを提供しています。創業当初はテレアポ事業が主軸でしたが、現在は自治体との連携や企業の業務支援など、幅広い分野へ事業を展開しています。
キャリママの特徴は、ママたちの「自立」を応援していることです。たとえば、子どもを連れて出勤できるオフィスや、保育園に入るまでのサポート体制を整備することで、ママたちが安心して働ける環境を実現しています。また、地方在住のママに向けたリモートワークの教育プログラムにも力を入れています。
これらの取り組みを通じて、働くことが単なる生活の手段ではなく、「自分だけの時間を持つ価値」や「自己実現の場」になるよう支援しています。私たちはこれからも、ママたちが新しい選択肢を持てる社会を目指して成長していきます。
経営ビジョンと理念
キャリママの理念は、「女性の力を社会に活かし、顧客満足の高いサービスを」です。まだまだ女性の活躍がしづらい日本社会において、小さな子どもがいてもしっかり稼げる、強い女性を増やしていきたいと思っています。
この理念の実現のためには、企業側の環境整備が必要になります。例えば、働きたくても子供が生まれたばかりで働けないというママのために、自社で保育園を運営し、子連れ出勤できるようにすることや、若くして子供を産んだためキャリアやスキルがなく就職先が見つからないというママのために、教育制度を整え、未経験者を育てる仕組みを作ることなどです。これらはすでに取り組んでいることではありますが、今後も継続してアップデートしていきたいと考えています。
とはいえ、理想ばかりを追い求めるのは簡単ではありません。ママのための環境を整備するためには社員の協力が不可欠です。過去、なかなか案件が獲得できず、事業が傾きそうになったこともあります。残念ながら去って行ってしまった人もいましたが、引き続きキャリママに残ると決断してくれた方も少なくありませんでした。この出来事がきっかけで、社員が「自分たちのため」という視点から、「社員のため」「企業のため」という視点に変わり、キャリママの理念の実現を自分事として捉える社員が増えました。現在では社員が「なぜキャリママで働くのか」を考え、意識したうえで仕事に取り組んでいるように思います。
競合との差別化ポイント
キャリママの強みは、単なるママの強みを活かしたアウトソーシングやBPOサービスの提供ではなく、ママたちの「生きる力」を支援している点にあります。
ワーキングマザーが働きやすい環境を整えている企業は増えてきていますが、その多くはある程度スキルを持っている社会人経験のあるママを対象にしたものです。キャリママは、社会人経験がないママや、モラハラや家庭内暴力の被害を受けたママたちにも手を差し伸べています。複雑な事情を抱えているママにとっての「シェルター」の役割を果たしつつ、社会復帰やその後の活躍を支える環境を提供しているのは、キャリママの大きな強みだと思っています。
だからこそ、ママたちのスキルアップ支援にも力を入れています。業務に必要なビジネスマナーやリモートワークスキルの教育を通じて、未経験からでも活躍できる力を身につけられる体制を整えています。このような「働くママに特化したサポート」が他社との差別化につながっています。
現在注力していること
現在、最も注力しているのは、自治体との連携を通じた地方のママたちへの支援です。特に地方在住で働く機会が限られているママたちに対し、リモートワークやビジネスマナーの研修を提供することで、新たな働き方を提案しています。また、「ママ=キャリママ」というブランドイメージを確立するための取り組みも進めています。働くママたちが当たり前に社会で活躍できるよう、働きやすい環境の整備と教育支援の両輪で支援を続けています。
今後の展望と挑戦
今後は全国に拠点を増やし、地域ごとのニーズに応じたサポート体制を構築していきたいと考えています。現時点では東京のみの拠点であり、地方に住んでいるママは在宅勤務をしています。これ自体は悪いことではないと考えていますが、たとえば、保育園併設のオフィスや、子どもと一緒に働ける環境を整備することで、在宅で子どもの面倒を見ながら働くスタイルだけでなく、子どもと離れて仕事に集中するスタイルも提案できるようになります。様々な事情を抱えるママたちが、自分にとってより良い働き方を選べるように、選択肢を広げていきたいと思っています。
さらに、シェルター機能を持つシェアハウスの設立や、自治体との協力を強化することで、ママたちの安心できる居場所づくりを進めていきます。これまでも、モラハラや家庭内暴力の被害に合い、逃げるようにキャリママに飛び込んでくるママたちがいました。そんなママたちが、より安心して働ける環境を作らなければ、本当の意味で「ママでも活躍できる社会」を実現することは困難だと考えています。キャリママが、そんなママたちの駆け込み寺のような存在になることを目指し、挑戦を続けていきます。
読者へのメッセージ
キャリママは、これまで「ママが働ける環境」を整備し、「ママが活躍できる社会」を実現するために取り組んできました。ママたちが仕事を通じて自己実現を果たす姿は、周囲にも良い影響を与えると信じています。
とはいえ、社会全体の理解が十分でないことも事実です。過剰な配慮をしてほしいというわけではないのですが、受電代行の際に「子どもの声がうるさい」というご指摘をいただくこともあります。同じ目標を持つチームの一員として、ママたちに対してリスペクトを持って接していただける方が増えれば、さらに良い社会が実現できると思います。
これからもキャリママは「ママたちの可能性を広げる」ために挑戦を続け、1人でも多くの方にキャリママのファンになっていただくために尽力していきます。
まとめ
「ママが活躍できる社会をつくる」というビジョンが、佐々木さんのキャリアを通じて具体化されている様子が鮮明に浮かび上がりました。フィリピンと日本の教育環境で培われた学び続ける姿勢、保育業界での経験を経て多業界に挑戦したキャリアの広がり、そしてキャリママで「バイトから役員」まで上り詰めた実績が、佐々木さんの人間力と行動力を物語っています。
キャリママは、働くママたちの「自立」を支援し、単なるアウトソーシングの枠を超えた「生きる力」のサポートを提供しています。モラハラやDV被害を受けた方々をシェルターのように受け入れ、スキルアップや社会復帰を支援する仕組みは、単なるビジネスの枠にとどまらない社会的意義を持っています。また、地方のママたちへのリモートワーク支援や、子どもと一緒に働ける環境の整備といった取り組みは、多様な働き方を支える選択肢の提供として高く評価されるべきものです。
社会全体の理解が進むにはまだ時間が必要だとしつつも、佐々木さんのリーダーシップのもとでキャリママが挑戦し続けることで、「ママでも活躍できる社会」が現実のものになっていくのではないでしょうか。キャリママが、我が国が抱える労働人口の減少の解決策の一つとして、私たちに希望と活力をもたらしていくことを期待しています。
佐々木さん、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました。