激動の通信業界を生き抜く──日本通信ネットワーク高部社長の経営哲学
日本通信ネットワーク株式会社
代表取締役社長
高部 文宏
私のキャリア
私は1989年に日本電信電話株式会社(NTT)に入社し、電柱や電話線など、電話設備をどう配備するかを企画する設備企画の部署でキャリアをスタートしました。当時の通信業界は、インターネットの普及を控えた激動の時代でした。1996年には、NTTが提供するインターネットサービス「OCN」の立ち上げに携わる部署に異動し、そこで本格的にIT関連の世界に足を踏み入れることになりました。
OCNは、日本最大のインターネットユーザーを抱えるサービスとして、当時から多くの期待が寄せられていました。しかし、IP技術を全く知らない中での挑戦は非常に厳しいものです。10人程度の少人数の開発チームで全ての業務を回す日々は、ほとんど寝る間もない過酷な状況でした。それでも、新しい技術に触れ、試行錯誤しながらサービスを構築していく楽しさは格別で、失敗を糧に仲間とともに進む経験は、現在の私の原点となっています。
その後、NTTコミュニケーションズに転籍をし、法人向けネットワークサービスの企画・開発に携わることになりました。ここでは企業向けVPNサービス「Arcstar Universal One」や、TV中継サービスなどの高品質なサービス提供を行いました。大企業を相手にするサービスにおいては、要求は極めて高く、シビアな評価をされます。多くの困難がありましたが、「日本を支えるネットワークを構築する」という使命感を持ちながら取り組んだことは、今でも私の誇りです。
そして2019年、日本通信ネットワーク株式会社の代表取締役社長に就任しました。日本通信ネットワークは就任前から内情を知る会社であり、自分自身の力で会社を変えていけるチャンスと前向きに捉えて快諾したことを覚えています。まだ道半ばではありますが、これまでの経験を活かしつつ、変革を恐れず挑戦することを心がけ、事業の再構築を進めています。
会社や事業の紹介
日本通信ネットワーク株式会社は、1985年に設立されたNTTグループ関連会社です。主要株主は株式会社NTTドコモですが、完全子会社ではないことから、良い意味で自由に動くことができる会社です。
日本通信ネットワークは設立当初、法人向けネットワークサービスの再販を主たる業務としていました。しかし、時代の流れとともにその役割は変化しています。私が社長に就任した2019年時点では、専用線サービスの再販が主力事業でありましたが、収益は右肩下がりの状況でした。そこで、事業構造を抜本的に見直し、中堅中小企業向けのICTソリューション事業への転換を図りました。中堅中小のお客様向けSIerへと事業転換を行うことを宣言し、SE人材の採用やSE部署の立ち上げを行うとともに、NTTグループの枠組みにとらわれず、中堅中小のお客様にとって有用な製品・サービスを広く取り揃えるなど、様々な取り組みをしています。
取り組みの中で、最も象徴的なものの1つといえるのが中堅中小企業のお客様向けサービス「FLESPEEQ」です。FLESPEEQは、「早い」「安い」「品質が良い」をキーワードに、クラウド、VPN、WiFiなどのICTサービスを網羅したフルラインナップを提供しています。その中でも、月額9,800円という業界最安値級のVPNサービスや、SASE技術を活用したセキュアなWebアクセスサービスは、多くの中堅中小企業の皆様に支持されています。
また、長年培ってきた専用線技術を活かし、NTTグループ向けのBPOサービス「マイグレーションセンター」を立ち上げるなど、レガシー技術の再活用にも注力しています。これらの取り組みを通じて、日本通信ネットワークは、中堅中小企業の皆様にとって頼れる「ICTの窓口」としての役割を果たしています。
経営ビジョンと理念
私たちのミッションは、「ICTを通じて豊かな未来づくりに貢献する」ことです。特に中堅中小企業の皆様が、ICTを通じて事業を効率化し、成長を遂げられるようサポートすることを目指しています。
中堅中小企業にとって、ICTはとっつきにくい存在であることが少なくありません。日々新しい技術やセキュリティの脅威といった話題が生まれ、難解な専門用語が飛び交う中で、情報システム担当者が少人数で全てをカバーしなければならないという現状があります。
私はNTTコミュニケーションに在籍していた時から、「ICT製品やサービスを、もっと家電のように手軽に選べないものか」と考えていました。だからこそ私たちは、そのような企業に向けた「ICTの窓口」として、全てのIT関連業務をワンストップで提供する体制を整えています。FLESPEEQをはじめとするサービスは、その理念を具体化したものであり、「早くて」「安くて」「品質の良い」ICTソリューションをお届けすることで、中堅中小企業の皆様が本来の業務に集中できる環境を提供しています。これからも、企業の成長を支えるパートナーとして、進化し続けたいと考えています。
競合との差別化ポイント
日本通信ネットワークの強みは、顧客目線で厳選した「早くて」「安くて」「品質の良い」ICTソリューションを提供する、いわばICTサービスのセレクトショップである点にあります。多くの企業が自社開発のサービスを提供している中、私たちは市場から最適なサービスを選び抜き、リーズナブルな価格で提供するという戦略をとっています。
たとえば、FLESPEEQ VPNサービスは、月額9,800円という市場最安値級の価格で提供されており、コストパフォーマンスの高さが大きな魅力です。また、クラウド、Wi-Fi、SASE技術を用いたセキュアなWEBアクセスといった最新の技術を取り入れ、幅広いラインナップでお客様のニーズに応えています。
さらに、NTTグループで培われた「ネットワーク関連のスキル」も他社にはない強みです。専用線やインターネット回線、VPNといったネットワーク設計・運用における長年の経験とノウハウを活かし、単に製品を提供するだけでなく、設計から保守運用までを包括的にサポートできる体制を整えています。
こうした差別化によって、私たちは中堅中小企業の皆様にとって、単なるICTソリューションの提供者ではなく、「頼れるパートナー」としての役割を果たしているのではないかと考えています。特に情報システム部門が限られたリソースで運営されている企業の皆様に対して、企画・導入・保守運用にいたるまでワンストップで最適なソリューションを提供できることは、他社ではなかなか真似できない私たちの強みだと考えています。
現在注力していること
現在、私たちが最も注力しているのは、新規事業の創出です。FLESPEEQはここ3年で320ユーザー、2,400契約にまで拡大しましたが、より多くの企業の皆様にリーチするための新たな取り組みが必要です。
若手メンバーを中心とした新規事業プロジェクトを立ち上げ、運用系サービスの充実や、医療業界向けの特化型サービスの開発を進めています。また、WEBマーケティングの強化によって販路を拡大し、これまでアプローチできなかった企業の皆様にもサービスを届けられるよう努力を重ねています。
今後の展望と挑戦
今後5年間でICTソリューション事業を倍増させたいと考えています。
現在の収益の内訳は、ICTソリューション事業が全体の約70%、その他NTTグループ向けのBPO事業などで約30%となっています。現時点ではある程度の収益が見込めるものの、ICTソリューション事業の実態が、NTTにおける専用線などレガシーネットワーク回線の再販が多いため、今後5年間で半減する可能性があります。この損失を指をくわえて見ているのではなく、FLESPEEQの拡大と新規事業によって維持・拡大させていきたいと考えています。
そのためにはFLESPEEQサービスのさらなる充実やWEBマーケティングの強化を通じて、販路の拡大が必須です。また、新規事業においては、各業界の方々のご意見を伺い、かゆい所に手が届くICTソリューションをご提案できるようにしていきたいと考えています。業界特化型サービスの開発を通じて、より的確なICTソリューションを提供し、中堅中小企業の皆様の頼れるパートナーであり続けることを目指します。
読者へのメッセージ
日本通信ネットワークという39年物の古めかしい会社ですが、NTTグループにおける関連会社として、法人の中堅中小のお客様に向けた、「早くて」「安くて」「品質のよい」ICTソリューションをFLESPEEQサービスという形でご提供しております。
私たちも中小企業ですので、コア業務への集中がいかに大切か、身に染みて感じています。ぜひ情報システム業務を私たちにまるっとお任せ頂き、本来のコア業務に集中できる環境を一緒に整えていきませんか?
日本通信ネットワークでは情報システム部門やそれに関連する業務を担うご担当者様向けに、日常的に発生する課題に対する解決のヒントなど、お役立ち情報を無料で配信しています。多くの方にご好評いただいておりますので、この機会にぜひご覧いただけると幸いです。
https://www.c-ntn.co.jp/knowledge/
まとめ
日本通信ネットワーク株式会社は、39年の歴史を持つNTTグループ関連会社として、長年培ってきたネットワーク技術と新たなICTソリューションの展開により、現在進化を続けています。
高部さん自身が歩んできたキャリアは、常に新しい挑戦の連続であったように思います。OCNの立ち上げに携わった日々、法人向けサービスの企画・開発で直面した困難、そして現在の経営者としての役割。これらを自分の成長の糧として前向きに捉え続けたからこそ、現在、同社が様々な革新的な取り組みを続けられているのではないかと感じました。
特に、FLESPEEQというサービスは、「早くて」「安くて」「品質の良い」ICTソリューションを中堅中小企業に提供するもので、従来の専用線再販モデルから大きく転換した象徴的な成果です。また、競合との差別化を図る上で、「ICTの窓口」としてワンストップで最適なソリューションを提供する戦略は、NTTグループの強みを活かしつつも市場のニーズに柔軟に対応する姿勢を際立たせています。
未来を見据えた挑戦も続いています。新規事業の創出やWEBマーケティングの強化、さらには業界特化型サービスの開発を進め、5年間でICTソリューション事業の売上を倍増させるという明確なビジョンを掲げています。その根底にあるのは、「ICTを通じて豊かな未来を築く」という企業理念です。
高部さんが語るように、変化の激しい現代において、変革を恐れず挑戦を続けることが企業の成長には不可欠です。日本通信ネットワークは、ICTソリューションのセレクトショップとして、中堅中小企業のビジネスパートナーであり続けることで、これからの社会においてさらなる価値を提供し続けていくのではないでしょうか。
高部さん、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました。