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「挑戦する全ての人の機会を最大化する」──Anotherworks大林社長が見据える未来

株式会社Another works

代表取締役

大林尚朝

私のキャリア

まず、私が「人」や「働き方」、そして「起業」に興味を持ったのは父の影響を大きく受けています。幼い頃から、地元大分で会社経営をしている父の背中を見て、DNAレベルで「自分もいつか起業する」と思っていたと同時に、父が人材採用で苦しむ姿をずっと見ていました。大分では人手不足が慢性化しており、正社員を募集しても応募がこないことは珍しくありませんでした。特に都市圏から離れた田舎は、転職の際に移住が伴うこともあり、この傾向は顕著でした。

 

人と企業の関係性に興味を持った私は、早稲田大学の法学部に進学し、労使関係を学ぶために労働法を専攻しました。同時に、学生インターンとしてリアライブという人材系の会社にジョインし、マーケティング責任者として集客基盤を構築しました。この経験は、私の常識を変えることになります。なぜなら、「人材を獲得する手段は正社員だけではない」という事実を知ったからです。派遣やアルバイト、短期雇用、業務委託、顧問、アドバイザー、インターン。雇用形態が何であれ、強い想いのある人材が仲間になれば会社は大きく変わる。この事実を実務を通して肌で感じられたことは、私の起業家としてのスタンスに大きな影響を与えていると思います。

 

その後、パソナグループに新卒で入社し、顧問やフリーランスなど、即戦力人材を業務委託という形で紹介する新規事業に従事し、ありがたいことに、史上最年少で年間最優秀賞を受賞しました。また、起業する前に成功している起業家の考え方を学ぼうと考え、当時最も成長が著しいテックベンチャーだったビズリーチに転職しました。M&A領域の新規事業における立ち上げメンバーとしてあらゆるチャレンジができたことはもちろん、南壮一郎さんのリーダーシップを間近で体感し、「仲間の集め方」や「組織文化の醸成」といった起業家にとっての本質を学びました。1年ほど修行させていただく中で「自分が本当に情熱を燃やせる領域はどこだろうか」と考え抜き、「複業」に辿り着いたのです。「複業」が挑戦機会の最大化につながり、そして人生の選択肢を豊かにする新しい働き方であると信じて、2019年5月に株式会社Another worksを立ち上げ、複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」をローンチしました。起業後の6年間は試行錯誤の連続でしたが、「挑戦し続ける」ことを忘れたことはありません。

 

会社や事業の紹介

Another worksは複業のリーディングカンパニーとして日本最大の複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を軸に事業拡大・新規事業を展開し続けている会社です。

 

当社の主軸サービスである「複業クラウド」とは、複業したい個人(タレント)と企業や自治体を繋ぐ総合型の複業マッチングプラットフォームです。タレントは登録・利用が一切無料で、求人へ直接エントリーが可能です。企業との直接契約なので、中間マージンもかからず原価で案件を受けることができます。企業からのスカウトが届くこともあるので、登録するだけで複業の機会を最大化させることができます。また、企業は毎月定額料金で求人掲載が可能です。採用が実現しても成約手数料は一切かからないため、採用コストが削減できる今までにないサービスです。

 

また、自治体と連携し、行政における複業人材活用の仕組みを構築することで、地域の課題解決を目指してきました。特にコロナ禍以降人々の働き方や価値観が大きく変化したことをきっかけにより複業やリモートワークの普及が進み、私たちのサービスも多くの人に受け入れられるようになりました。

 

企業だけでなく自治体との連携を強化し、現在では自治体事業で日本最大規模を誇るまでに成長しました。複業を通じて働く個人のスキルを活用しながら、地方活性化に貢献できるモデルを構築している点が、当社の大きな強みです。

 

経営ビジョンと理念

「挑戦するすべての人の機会を最大化する」――

これが私たちの掲げるビジョンです。私は、ビジョンを「未来の世界を現代に解像度高くもってきたもの」と定義しています。策定は決して簡単ではありませんでしたが、私なりに複業が当たり前になる世界を想像し、このようなビジョンを策定しました。

 

極めて挑戦的なビジョンであり、経営者として常に挑戦を続けなければいけないというプレッシャーはあります。しかしながら、ビジョンを共有し、それに共感する仲間たちとともに進むことで、単なる目先の利益ではなく、長期的な社会的価値を創出し続ける組織を目指すことができると考えており、これが私の考える「ビジョン経営」の強みだと思っています。だからこそ、役員をはじめとした全社員には、挑戦を恐れずにとにかく前に進むよう伝えています。スピード感を持ち、挑戦を積み重ねることで、未来の働き方を具現化していきたいと考えています。

 

また、当社は役職や年齢に関係なく、成果を出した社員をその分だけ評価しています。当社が掲げるビジョンの実現には、数多くの挑戦が必要であり、会社が定める評価制度が社員の挑戦意欲を損ねるものであってはいけないという信念があるからです。また、当社に興味を持ってくれた方には必ずこの価値観をお伝えしています。究極的な話かもしれませんが、当社と価値観が合う人だけが最大限の力を発揮できる組織の方が、ビジョンの実現により近づけると考えています。

 

競合との差別化ポイント

コロナ禍を経て、副業や兼業を取り巻く環境は大きく変わり、副業や兼業を支援するプレーヤーは増えたと思います。とはいえ、競合を意識しすぎることはしていません。結局のところ、自分たちが何をしたくて、提供するものに価値を感じるユーザーは誰かを考え続けることが大切だと考えているためです。

 

例えば、副業や兼業は「副収入を得る手段」や「楽に稼げる手段」のように捉えることもできます。実際にこのようなフレーズで認知を獲得しているプレーヤーもいます。一方で私たちは「挑戦する全ての人の機会を最大化する」というビジョンを掲げ、お金を稼ぐだけではなくキャリアアップやスキルアップ、感情報酬といった複数の目的を持った「複業」を世の中の当たり前にすることを目指しています。

 

また、200を超える自治体と連携した地方創生事業も、副業や兼業を「楽に稼げる手段」と捉えている方々にとっては優先度が高いものとは言えないはずです。重要なのは、私たちが実現したい未来や価値感に共感していただけるユーザーを考え続けることです。複業を通して地元に恩返しをしたい、自分のスキルを社会に還元したいという想いを持ったユーザーに届けるにはどうしたらよいかということを常に考えています。

 

現在注力していること

現在、最も注力しているのは「採用」や「事業戦略」など、更なる高みを目指すための戦略設計です。おかげさまで事業の基盤は整いつつあり、事業を任せられる社員も増え、権限譲渡も進められています。だからこそ、今経営者として力を入れるべきは、未来の世界をどれだけ想像し、そのための準備を進められるかだと考えています。

 

私はコロナ禍で起業をし、世界の劇的な変化を経験しているので、従来の価値観は簡単に変わってしまうという考えを強く持っています。採用や組織という価値観が今後どのように変わっていくのか。これらを加味して、2030年にはどのような世の中になっているのか、国内外の様々な情報を集め、連想ゲームのように頭の中で未来の世界を構築しています。

 

今後の展望と挑戦

複業クラウドを基盤に、さらに新しいビジネス領域と掛け合わせることで、働き方や社会の仕組みを進化させていきたいと考えています。

 

2050年、日本の人口は1億人を下回り、超高齢化社会になることがほぼ確定しています。今以上に複業の需要は高まり、市場が成長することも明白とはいえ、日本が生き残れるかはわかりません。日本が戦い続けられる状態を作るためにも、私たちが複業の市場を牽引し「社会的なインパクト」を発揮する企業でありたいと考えています。

 

とはいえ、私たちは民間企業です。慈善事業では成り立ちません。社会にとって良いことを続けるためには、利益を出し続けなければなりません。「経済的なインパクト」も発揮しなければならない、ということです。

 

だからこそ、経営者として「社会的なインパクト」と「経済的なインパクト」をブレンドしていく必要があります。複業クラウドを中心にあらゆることを連想し、どんな業界、どんな領域、どんな課題と組み合わせるかを考え続ける必要があります。決して、「複業クラウドを提供する会社」という認知で終わってはいけません。極めて難しいことではありますが、同時に非常に面白い挑戦だと思っています。

 

読者へのメッセージ

人生は「道中を楽しむ」ものだと思っています。目的を達成することだけが全てではなく、その過程での挑戦や学びにこそ価値があります。生きる意味、生きる目的を持っていないことこそが人間の面白さです。もし、最初から生きる意味を与えられていたら、私はきっと起業していないと思います。死ぬまでわからないかもしれませんが、自分で生きる目的や意味を見つけ出すことが、人生の楽しみ方ではないかなと考えています。

 

私たちは、複業を通じて一人ひとりが可能性を広げ、新たな価値を生み出せる社会を目指しています。変化が激しい時代ですが、挑戦し続けることが未来を切り拓く鍵だと思っています。人生を楽しみながら、ともに日本をより良い社会にしていきましょう。

 

まとめ

大林さんのコアには「人」と「働き方」に対する深く強い興味が貫かれていると感じました。「複業」という新しい働き方に並々ならぬ情熱を燃やしていたからこそ、Another worksは今や日本最大の複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を展開するまでに成長していると思います。特に自治体との連携による地方創生の取り組みは、社会課題の解決とビジネスの成功を両立させるモデルとして注目されており、大林さんの情熱が日本を動かした事例なのではないでしょうか。

 

また、「挑戦するすべての人の機会を最大化する」というビジョンは、自分自身の理想であり、自分を律する枷にもなっている印象を受けます。2050年の超高齢化社会を視野に入れ、複業の普及による社会的・経済的インパクトを両立させることは決して簡単ではありません。しかし、複業クラウドを軸に新たな領域との掛け合わせを模索し続ける姿勢は、日本の労働市場の未来を牽引する覚悟を感じさせます。

 

そして、挑戦の過程やその先にある学びや成長こそが人生の醍醐味というのも、大林さんの人生観や経営哲学が光ります。複業があたりまえになる社会の実現に向けて、大林さんを筆頭に様々な想いを持った人が集い、楽しみながら挑戦を続けているAnother works。きっと、そう遠くない未来に大林さんのビジョンが現実のものになるに違いないでしょう。インタビューを通して、そのように確信させるエネルギーを感じました。

 

大林さん、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました。