奨学金を“社会で返す”仕組みをつくる。アクティブアンドカンパニーが拓く新しい雇用支援の形
1. いままでのキャリアについて
大学卒業後、株式会社パソナに入社しました。営業として企業の人材課題に向き合い、3年間は営業現場で、後半の3年間は営業推進として名古屋以西の大手案件を担当しました。人と企業の関係を俯瞰して見られるようになったのはこの頃です。
その後、デロイト トーマツ コンサルティング(旧トーマツコンサルティング)に転職し、組織人事コンサルタントとして制度設計や組織風土改革に携わりました。経営と現場のギャップを埋めれば、組織はもっと強くなる。この確信が、起業の原点になりました。
パソナにいた時から、いずれは起業すると決めていました。人材業界の中で感じていた違和感、それを自分の手で変えたかったからです。2006年、株式会社アクティブアンドカンパニーを設立しました。現在、専務の八代と二人で立ち上げましたが、「人と組織の可能性を最大化する」という信念のもと、少しずつ仲間を増やしてきました。
2. 会社や事業の紹介
株式会社アクティブアンドカンパニーは、組織人事コンサルティングを軸に、人事制度設計や教育研修、給与計算のアウトソーシング、HRテックサービス「サイレコ」などを展開しています。いわゆる「採用」ではなく、「採用した後」の領域を支援している点が特徴です。
人材を採用するだけでなく、入社後にどう成長させ、どう定着させ、どう会社を動かしていくか。そこにこそ人事の本質があると考えています。その中で近年注力しているのが、奨学金返還支援サービス「奨学金バンク」です。これは企業が奨学金返還を支援する仕組みで、社会課題の解決を目指しています。
3. 経営ビジョンと理念
当社の理念は「躍動感溢れる未来を創造する」。人・組織・社会の可能性を開拓し、共に成長することを使命としています。奨学金バンクの根底にあるのは、「学歴社会を構築した企業が、その責任の一端を負うべき」という考えです。今の日本では、大学進学率が6割を超える中、学費の値上がりや物価の上昇、親世代の給与の伸び悩みといった要因により、多くの学生が進学のために奨学金に頼らざるを得ない状況です。なぜここまで学歴が求められるのか。それは企業自身が「大卒」を採用条件にしているからです。
つまり、学歴インフレを生み出したのは企業。だからこそ、その負担は民間企業をはじめ、社会全体で支える必要がある。私はそう考えています。
採用費を単なるコストではなく、次世代への投資に変える。それが奨学金バンクの思想であり、株式会社アクティブアンドカンパニーが掲げる“企業の社会的責任”です。
4. 競合との差別化ポイント
奨学金返還支援の分野に、明確な競合はいません。現時点で、全国で同様のスキームを運用しているのは当社だけです。この領域は、制度設計の理解や金融機関との連携、信託管理など、複数の専門知識が求められるため、簡単には真似できません。私たちはコンサルティングとBPO(業務代行)の両輪を持つからこそ、構想から設計、そして運用までを一貫して支援できる体制を整えています。
奨学金バンクの仕組みは、三つの柱で構成されています。
一つ目は、奨学金利用者に特化した人材紹介。企業が支払う紹介手数料の一部を信託銀行に預け、そこから奨学金を代理返還します。所得税や社会保険料が上がらない形で返還できるため、本人にも企業にもメリットがあります。
二つ目は、企業が福利厚生として導入できる代理返還制度の設計と事務代行。税制面の優遇を受けながら、社員の返還を支援できる仕組みです。
三つ目は、奨学金返還支援制度を導入している企業や、この事業に賛同している企業を集約したポータルサイトの運営。支援企業に「奨学金バンク認定ロゴ」を付与し、採用ブランディングやSDGs活動にも活かしていただいています。
こうした制度設計・代行・広報支援を一気通貫で行える点こそ、私たちの最大の強みです。 一方で、同じような取り組みを行う企業が増えることも歓迎しています。私たち一社だけでは社会を変えることはできません。競合が増えることでこそ、若者を支える流れが広がると考えています。
5. 現在注力していること
いま最も注力しているのは、奨学金バンクの社会的認知を広げることです。奨学金を返還しながら働く人は全国で約490万人。彼らに「奨学金バンクという選択肢がある」と知ってもらうだけでも、人生の可能性は広がります。
私たちは大学のキャリアセンターや就職課との連携を強化し、奨学金返還支援を福利厚生として導入する企業を増やす活動を進めています。同時に、金融機関や行政との協業を通じて、より多くの企業が参加しやすいスキームを整備しています。
一方で、人材業界全体にも変革が必要だと感じています。人材紹介ビジネスは“転職を煽る構造”になりがちで、社会的価値を還元する仕組みが弱い。奨学金バンクは、その構造を正す新しいモデルです。紹介手数料を一部社会に還元する、それこそが人材業界が社会的意義を取り戻す第一歩になると信じています。
6. 今後の展望と挑戦
奨学金の貸与総額は約9兆5,000億円。そのうちの1割――1兆円を民間企業の支援で循環させたい。それが、私たちの長期的なビジョンです。この目標を実現するために、三井住友信託銀行などの金融機関や行政と連携し、奨学金返還の仕組みをより公的なレベルに引き上げていきたいと考えています。また、私たち自身も組織人事領域において、中堅・中小企業が人材を確保し、活かすための新しい選択肢を提供し続けていきます。
人が採れないから成長できない、そう嘆く企業が多い今だからこそ、「人を支える仕組み」を整え、経営と人事のあり方そのものを進化させていくことが使命だと感じています。
7. 読者へのメッセージ
人は、いまや“高級品”です。だからこそ「採れない」と嘆くのではなく、「どう活かすか」を考える時代に変わっています。人材不足という言葉を口にしているうちは、まだ本質が見えていません。人がいないのではなく、人を活かす仕組みがないだけ。だからこそ、人事そのものを変えていく必要があります。
株式会社アクティブアンドカンパニーは、組織人事の力で企業と社会をより良くしていく会社です。奨学金バンクはその象徴であり、「人を採る」から「人を支える」へ――その転換を日本中に広げていきたいと思っています。