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「ともに、いっしょに」──地域密着型クリエイティブ企業エーウイングの挑戦

株式会社エーウイング

代表取締役社長

門脇恵二

私のキャリア

私は、高校を卒業してすぐ、プロのミュージシャンを目指してバンド活動に専念していました。進学校に通っており、同級生のほとんどが大学進学を選ぶ中でこのような決断をしたのは、兄の大学受験の様子を見ていたからです。受験で苦労している兄の姿を見て、もっと違う人生の歩み方があるのではないかと考えていました。

 

音楽で生きると決めたものの、同級生が社会に出るまでに身を立てようと考えていたので、4年という期限を設けて活動していました。当時組んでいたバンドはなかなかうまくいかず、2年目で「このままでは間に合わない」と感じ、解散しました。その後、市場調査を行い、レコード会社へのアプローチを戦略的に進めました。当時はJUDY AND MARYやEvery Little Thingなど、女性ボーカルの3ピースバンドが売れていたことを受け、方向転換をしたこともありますし、毎月デモテープを30社に送ると決めて、ときには直接持参したりすることもありました。何度も断られましたが、その姿勢が評価され、大手レコード会社から声をかけていただきました。私自身は4年という期限を決めていたので、とにかく売れればよい、とにかく表舞台に立てれば良いと考えていたのですが、残念ながらメンバー間の意見に食い違いがうまれ、数少ないデビューのチャンスを逃してしまいました。業界的に、一度断ると次のチャンスはなかなかめぐってきません。不本意ではありましたが、4年で音楽の道を断念することになりました。

 

こうなると、新しい食い扶持を探さなければなりません。元々「何かを発信する」ということにこだわりを持っていたため、この情熱を映像やWEB制作に向けようと決心し、音楽仲間と共に最初の会社を立ち上げました。社会人経験のない20代の集まりだったため、ビジネスのいろはなんてまるでわかりません。映像制作やWEBサイト制作を手掛ける中で、数多くの失敗を積み重ねました。とはいえ、若いからこそ無理や失敗を多く経験できましたし、自分自身の限界も知ることができました。面倒見の良いクライアントに恵まれ、叱られながらもビジネスのいろはを吸収し、事業の基盤を築いていきました。

 

立ち上げて5年が経った頃、創業メンバーの方針にズレが生まれたことがきっかけで独立の道を歩むこととなりました。この時に立ち上げたのが、株式会社エーウイングです。

 

 

会社や事業の紹介

株式会社エーウイングは、クリエイティブを通じて価値を発信することを主な事業とする会社です。WEB制作と映像制作を中心に、多摩地域に根差した事業展開を行っています。地元に焦点を当てた結果、医療機関や行政機関との取引が増え、地域密着型の企業としてシェアを高めてきました。多摩地域の課題に関する情報と、その解決策を持っていることがエーウイングの強みです。

 

もともとは、仲間と立ち上げた会社から一部のクライアントを引き継ぐ形でスタートし、そこから地元のニーズに応えるために事業を展開していきました。地域に根ざしていることがクライアントの信頼に繋がり、その結果、クライアントとの継続的な取引へと発展しています。現在は、地元密着のスタンスを基盤に、多摩地域の企業や団体と共に地域のアップデートに貢献しています。

 

経営ビジョンと理念

エーウイングの経営ビジョンは、「多摩地域をアップデートする」ことです。このビジョンは創業10周年を機に掲げたものです。正直なところ、当初は「多摩地域をアップデートする」というメッセージは賭けでした。多摩地域と宣言してしまう以上、その他の地域からの相談を暗にお断りしているように伝わってしまう可能性があったからです。とはいえ、創業社長として、地元に根差した事業を展開し続けることに誇りもあり、勇気を持ってこのメッセージを選びました。

 

結果的にこの決断は正しかったと思っています。行政や医療機関など地域に根差した機関や団体は、できれば地元に密着した企業を選びたいという想いを持っています。私たちのアイデンティティーが魅力的な提案のひとつとなり、結果的に多くの支持を得ることができました。さらにこのビジョンは採用にも良い影響を与えています。できることなら地元に貢献したいと考える人材が多く集まるようになり、共感を持った仲間と共に成長する原動力となっています。

 

競合との差別化ポイント

エーウイングは、制作会社としての差別化が難しい市場の中で、「ともに、いっしょに」をコンセプトに掲げています。クライアントと一体となってプロジェクトに取り組む姿勢が特長で、単なる制作代行にとどまらず、戦略的パートナーとしての役割を果たしています。WEB制作や映像制作において、単なる構造物の提供ではなく、クライアントの経営改善に寄与するクリエイティブを目指しています。

 

また、多摩地域に特化したノウハウを持っている点も他社との違いです。地域の課題に対する深い理解と実績があり、それがクライアントからの信頼につながっています。特に医療機関や行政との連携を強化し、地域密着型のクリエイティブサービスを提供することで、他の制作会社とは一線を画しています。

 

現在注力していること

現在、エーウイングは業務拡大と共にクライアントへのさらなる貢献を目指しています。事業規模を拡大する必要性を感じる一方で、従来の軍隊型組織にはしたくないという思いがあります。今は多様性の時代です。時代に合わせて、より柔軟に働ける環境を整備していきます。実際に、退職した社員がフリーランスとして仕事を手伝ってくれることもあり、立場は変わっても緩やかな繋がりを保ちながらプロジェクトを進めていくのは、新しい働き方なのではないかなと感じています。

 

また、私はWEBサイト制作を「未来を創る活動」として位置づけています。ある意味、WEBサイトはクライアントが理想として掲げている姿ではないでしょうか。今はまだその理想に至っていなくても、将来的にはこんな状態を目指したい、という想いが現れていると感じています。だからこそ、私たちはWEBサイトを作るだけでなく、クライアントの目標達成に向けたクリエイティブなアプローチを追求し、長期的なパートナーシップを構築することを重視しています。既存の顧客に対して深くコミットし、信頼関係を築くことが目標です。

さらに、多摩地域の製造業や中小企業の悩みに対応するための取り組みも進めています。地元企業が抱える課題を解決し、経営の支援を通じて地域全体の成長に貢献することを目指しています。

 

今後の展望と挑戦

私はキャリアを通してWEB制作に携わってきました。20代の頃は真新しかったサービスでも、20年も経てば一般化されます。そのため、WEB制作そのものは、すでにレガシーなビジネスになっていると感じています。WEB制作とともに歩んできたからこそ、ありきたりなWEB制作からの脱却を目指していきたいです。クライアントの要望通りに制作するだけでは、流行に左右されてしまいます。より上流に立ち、クライアントと共に経営改善を目指すクリエイティブな時間を提供することが重要だと考えています。制作して終わりではなく、運用面にも力を入れていく方針です。

 

また、これからは多摩地域の製造業や中小企業が抱える緊急の課題に対応していきたいと思っています。言い方は悪いですが、多摩地域の企業はとても素直で真面目です。不誠実な制作会社に高額な費用を搾り取られ、苦しんでいる企業も少なくありません。私たちは、多摩地域に根ざした企業として、このような不幸な企業を無くすための支援を行っていきたいと思っています。地域の企業と共に新たな価値を創造し、地域経済の活性化を図ります。

 

そして、クリエイターが集まる企業だからこそ、今よりも一層クリエイターの悩みや挑戦をサポートする環境を整えていきたいとも思っています。クリエイターは人よりも少し繊細で、簡単には割り切れないような矛盾する悩みを抱えていることが多くあります。内省的で深く考えられるからこそ、素晴らしいクリエイティブが生まれるのだろうとも思います。経営者として決断が求められることはありますが、悩み続ける覚悟を持つクリエイターたちに寄り添い、共に成長していくことを目指していきたいと思います。

 

読者へのメッセージ

諸先輩方に意見をするのは少しおこがましい気がするので、尊敬している先輩からもらったメッセージを引用しながら、私のコメントとさせていただきます。

経営者としての強さとは、弱さをさらけ出す勇気を持つことだと思います。自分の弱さを隠すことなく伝えられるのは、本当に強い人だからこそできることです。私自身も多くの失敗を経験してきましたが、そうした経験が自分を強くしてくれました。経営にはアップダウンがつきものです。それを楽しむ心を持ち、常に新しい挑戦に取り組んでください。困難に直面しても、一歩ずつ進んでいくことが大切です。

 

まとめ

「多摩地域をアップデートする」という大胆なビジョンを掲げながら、地元密着のスタンスを保ち続けたことが、エーウイングという企業の成長エンジンになっています。現在はWEB制作や映像制作を単なるサービス提供にとどめず、クライアントの課題解決や経営改善に深く関わりたいと考え、クライアントと「ともに、いっしょに」成長を目指す姿勢が伺えます。これは、より良い作品を創るプロセスの中に刻まれた門脇さんの信念であり、バンド時代から「どうすれば勝てるか」を考え続けた門脇さんの強さではないでしょうか。

 

また、クリエイターとして悩み続けることの大切さや、弱さをさらけ出せる強さが経営者に求められる資質であるという言葉からは、エーウイングが今後も地域の課題解決に向き合い、ともに悩み、挑戦していこうという姿勢が伺えます。多摩地域の発展の裏にエーウイングありと言われる日を心待ちにしながら、今後も門脇さんの活躍に注目したいと思います。

 

門脇さん、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました。