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新規事業におけるビジネスモデルを徹底解説!基礎から構築プロセス、成功事例まで

新規事業の立ち上げでは、新しいアイデアやサービスをいかに実行可能な形に落とし込むかが鍵を握ります。その際、明確に練られたビジネスモデルがあれば、市場に対するアプローチや収益確保の方法を体系的に整理できます。どれほど優れたアイデアでも、実践可能なビジネスモデルがなければ軌道に乗せるのは難しいと言えるでしょう。

本記事では、新規事業におけるビジネスモデルの基本的な考え方に加え、構築プロセスやフレームワークの使い方、さらには成功事例に触れながら深堀りしていきます。

ビジネスモデル構築に役立つフレームワークがわかるダウンロード資料

新規事業では、既存事業に比べて未知の要素が多く、仮説検証を繰り返しながら市場のニーズと収益構造を見極めていく必要があります。明確なビジネスモデルを持つことで、社内外のステークホルダーとの意思疎通をスムーズにし、必要なリソース配分やリスク管理が行いやすくなるのです。本資料ではそんなビジネスモデル構築に役立つ主要フレームワーク5選を紹介します。

ビジネスモデルとは?新規事業における重要性

新規事業を軌道に乗せるためには、ビジネスモデルを明確に定義しておくことが極めて重要です。

ビジネスモデルは、企業がどのように価値を創出し、顧客に提供し、その対価を得るのかを体系的に示す仕組みです。特に新規事業では、既存事業に比べて未知の要素が多く、仮説検証を繰り返しながら市場のニーズと収益構造を見極めていく必要があります。明確なビジネスモデルを持つことで、社内外のステークホルダーとの意思疎通をスムーズにし、必要なリソース配分やリスク管理が行いやすくなるのです。新規事業を成功させるには、どのように収益を得るかだけでなく、顧客に適切な価値を提供し続けられるかの視点も欠かせません。

実際に事業を進めてみると、コンセプトを作った段階では想定していなかった課題や競合状況が後から明らかになることはよくあります。そのため、ビジネスモデルを柔軟に見直しつつ、サービスの価値と収益ポイントを常に検証し続ける姿勢が大切です。特に新規事業の場合、最初から完璧なモデルを求めるよりも、早期ローンチと継続的な改善を繰り返すことで、顧客の日常に根付いた価値を提案できるようになるでしょう。

ビジネスモデルの定義と役割

ビジネスモデルは企業活動の骨格にあたり、市場への入り口をどこに設けるか、どの層に向けて価値を提供するか、収益源をどう確保するかなどを包括的に示します。新規事業では、アイデアだけでなく、売上や利益をどう生み出すのかを明確にすることで、投資家や社内関係者に納得感を与えやすくなります。特にリスクの高い新規事業では、事前にビジネスモデルを精査しておくと、開発やマーケティングの優先順位が判断しやすくなるでしょう。

代表的なビジネスモデルの種類

多種多様なビジネスモデルの中から、自社の目的やターゲットに合うものを慎重に検討していきましょう。

新規事業を成功させる上で、まずは数多く存在するビジネスモデルを一通り把握することから始めるとよいでしょう。どのビジネスモデルにもメリットとデメリットがあるため、企業のリソースや顧客属性、市場環境などを踏まえて最適解を探る必要があります。市場に参入しやすいモデルを選んで先行投資を抑えるのか、それとも差別化要素を明確に打ち出せるモデルを採用してブランド力を築くのかは、全体戦略によって異なるでしょう。

新規事業は最初の段階で爆発的にシェアを獲得するよりも、継続的な顧客獲得と安定収益を狙うケースが多く見られます。特にサブスクリプションモデルやフリーミアムモデルなどは、ユーザーがサービスに慣れた段階で有料化やアップセルを図ることが可能です。逆に小売モデルやメーカー(製造)モデルの場合は、在庫管理や製造プロセスが事業の鍵を握るため、品質管理とコスト管理の徹底が不可欠になってきます。

① 小売モデル

小売モデルは、他社から商品を仕入れ、顧客に販売して利益を得る形態です。手軽に始めやすい一方で、同業他社との差別化や規模の経済を生かした効率運営がなければ価格競争に陥りがちというリスクがあります。新規事業として小売を選ぶ場合、顧客体験を向上させる工夫や独自のセレクトを取り入れるなど、付加価値をどう提供するかを常に意識することが重要です。

② メーカー(製造)モデル

自社が製品を開発から生産、販売まで一貫して行うモデルです。品質とブランド力が高まれば高い収益率を狙える反面、製造設備や物流体制など投資コストが大きい点が特徴です。新規事業で挑戦する際は、少量生産や外部委託を活用してリスクを抑えながら事業を拡大し、徐々に内製化していくアプローチも有効でしょう。

③ 広告モデル

メディアやプラットフォーム上に広告を掲載し、その枠を販売することで収益を得るビジネスモデルです。主にWebメディアやSNSでコンテンツを提供し、多くのユーザーを集めることで高い広告収益を狙えます。ただし、広告主を惹きつけるには明確なターゲット層や十分なトラフィックが必要なため、コンテンツの質や継続的なPV獲得施策が成功を左右するでしょう。

④ 従量課金型モデル

従量課金型モデルは、サービスの利用回数や消費量などに応じて料金を請求する仕組みを指します。顧客としては初期コストを抑えられるため導入ハードルが低く、必要な分だけ支払うことができるメリットがあります。一方、事業者側は料金体系を分かりやすく設計しなければ、顧客にとって不透明だと感じられるリスクがあります。適切な単価設定とユーザーサポートの仕組みを整えることで、継続利用を促進できるでしょう。

⑤ サブスクリプションモデル

月額や年額など定期的に支払うことで、継続的にサービスや商品を利用できる仕組みです。安定した収益が見込めるため、新規事業として立ち上げる際にも将来予測がしやすいメリットがあります。ただし、一定期間が経過すると顧客がサービスを解約する可能性もあるため、継続利用を促すための顧客満足度向上施策が重要です。定期的な機能追加や顧客データの活用により、常に新しい価値を提案し続ける必要があります。

⑥ マッチングモデル

需要と供給のある双方をプラットフォーム上で結びつけ、仲介手数料などにより収益を得るモデルです。リソースを持たずとも大きな市場価値を創出できる反面、ユーザー数が増えるまでの初期段階での拡大施策が課題になります。また、サービス利用者の口コミやリピート率が高まるほどネットワーク効果が生まれ、競合他社の参入障壁が上がる強みを持つ点が魅力です。

⑦ フリーミアムモデル

基本機能を無料で提供し、追加機能やプレミアムコンテンツを有料にすることで収益を得るモデルです。ユーザー数の拡大と有料版への転換率をいかに高めるかが最大のポイントとなります。新規事業においては、まず無料で顧客を獲得し、利用状況のデータをもとに有料版の魅力を訴求する仕組みづくりが重要です。ある程度成長した段階で、広告モデルなど別の収益源を併用することも検討すると、安定収益を確保しやすくなります。

新規事業でビジネスモデルを構築する4つのステップ

新規事業の成長を促すには、市場調査から検証・改善までを段階的に実践するアプローチが不可欠です。

ビジネスモデルの構築ステップは大きく分けて市場調査、価値と収益の設計、提供方法の具体化、そしてリーンスタートアップでの検証と改善に分類できます。新規事業は予測不能な要素が多いため、最初から大きなリソースを投入するよりも、スモールスタートで顧客の反応を取り込みながら調整するほうが成功率も高まります。とくに競合調査や顧客インタビューを段階的に実施することで、時代の変化やユーザーの声をいち早くキャッチし、柔軟にモデルを修正できる状態を作っておくのが理想です。

経営資源の限られた新規事業では、常に優先順位を明確にして動くことも求められます。最小限のコストで最大の学びを得るためには、まず検証すべき仮説をはっきりさせ、データ取得やユーザーへのヒアリングを繰り返しながら改善サイクルを回すのが効果的です。これらのステップを踏むことで、自社の強みを生かしながら、顧客にとって本当に必要なサービスを形にできる可能性が高まるでしょう。

ステップ1:市場調査とターゲット顧客の設定

まずは市場の規模感や競合企業の存在、顧客層のニーズなどを幅広く拾い上げることが大切です。よくある失敗として、世間全体でのブームや一部メディアのトレンドだけを見て、具体的な顧客像を定めないまま進めてしまうケースがあります。新規事業ほど、潜在顧客の課題やライフスタイルを詳しく把握することが、正しいビジネスモデルを選択するための第一歩になります。

ステップ2:価値提供(What)と収益の仕組み(Why)の明確化

顧客が求める価値(What)をどのように提供し、具体的にどういう仕掛けで収益(Why)を得るのかを明確にする段階です。例えば同じ小売モデルでも、早めのデリバリーサービスを強化して付加価値をつけるなど、顧客接点の工夫によって差別化は可能です。新規事業では特に、価値提案と収益ポイントがブレないように設計し、後から修正する際も一貫性を保ちやすいようにしておくとよいでしょう。

ステップ3:提供方法(How)の具体化

サービスや商品を顧客に届けるチャネルや流通網をどう組み立てるかは、事業運営の効率化にも直結します。メーカー(製造)モデルであれば、製造拠点や物流ルートの最適化が不可欠ですし、マッチングモデルであればオンラインプラットフォームの利便性とユーザー数の獲得施策が重要になります。ここで適切なパートナーシップや外部リソースを活用するかどうかも、コスト面や事業スピードに大きく影響するため、事前にしっかりと検討しておきましょう。

ステップ4:リーンスタートアップでの検証と改善

リーンスタートアップでは、最小限の機能を素早く市場に投入し、実ユーザーからのフィードバックを元に改善を重ねていきます。新規事業は大がかりなリリースよりも、迅速にプロトタイプをローンチし、失敗を小さく抑えながら学びを得るアプローチが効果的です。仮説が間違っていた場合は素早くピボットし、正しい方向性を掴むまで継続的に検証を繰り返すことが成功への近道となります。

ビジネスモデル構築で意識しておきたい3つのポイント

ビジネスモデルを考える際には、顧客や市場、競合など様々な角度から検討を重ねることが大切です。

単に「どのように収益を得るか」という視点だけでなく、「顧客がなぜそのサービスを使い続けるのか」という点にも注目してモデルを設計する必要があります。新規事業は、どんなに魅力的に見えるプランでも、市場投入後の反応が想定と異なることがしばしばあります。そうしたギャップに適切に対応できるよう、当初から柔軟性や改善プロセスを組み込んだビジネスモデル設計を行うのが理想です。

また、競合企業の動向や業界内のトレンドを定期的にレビューすることも忘れないようにしましょう。特に新規事業では、あるタイミングで優位性を築いていても、そのままの状態に甘んじてしまうとあっという間に競合に追い抜かれる可能性があります。顧客ベネフィットを常に再評価しながら、モデル全体を改善し続ける姿勢が、長期的な持続成長を実現するポイントです。

①顧客属性ごとの課題整理と差別化

顧客を一括りにするのではなく、セグメントごとに異なるニーズや課題を捉えることで、ピンポイントな打ち手を検討しやすくなります。例えばサブスクリプションを利用する顧客層は、費用対効果や更新タイミングを重視する一方、単発購入を好む顧客は必要なときだけ支払いたいという合理的な面を持ち合わせているかもしれません。異なる顧客属性それぞれに合った提供方法と差別化策を講じることが、競合と差をつける大きな武器になります。

②仮説検証からの迅速なピボット

新規事業では、初期設定したビジネスモデルが想定していた通りに機能しないことも多々あります。その際、失敗を学びとして素早く方向転換する、いわゆる“ピボット”の判断を躊躇しないことが求められます。ユーザーインタビューやアクセス解析などデータを活用して、意外なニーズや改善点を見つける姿勢が大切でしょう。

③社内外リソースとの連携とアライアンス

リソースが限られる新規事業の場合、社外パートナーとの協業やアライアンスによって不足する機能やノウハウを補える可能性があります。内部で開発や運営を行うよりも、スピードとコスト面で優位に立てるケースも多いでしょう。一方で、外部連携には相手企業との目標のすり合わせや契約条件の調整が必要になるため、事前に明確な戦略とコミュニケーションを用意しておく必要があります。

ビジネスモデル構築に役立つ主要フレームワーク

新規事業のビジネスモデルを考えるうえで、「フレームワーク(分析ツール)」を活用することは非常に効果的です。なぜなら、複雑な事業環境を構造化して把握しやすくなり、抜け漏れを防ぎながら、より精度の高い戦略を立てることができるからです。

ここでは、実際のビジネスモデル設計に役立つ代表的な5つのフレームワークを紹介します。目的や状況に応じて、上手に組み合わせて活用しましょう。

①ポジショニングマップ:自社の立ち位置を定める

縦軸と横軸に価格帯や品質、サービス内容などの要素を設定し、競合他社との相対比較を視覚的に行う手法です。自社の強みや弱みがどこにあるのかを把握できるため、参入すべき領域や差別化のポイントが明確になります。新規事業では特に、既存企業と真っ向勝負するか、市場の隙間を狙うかなど、戦略判断に役立つ指針を得られるでしょう。

どんなときに使う?

➡ 自社が「どの領域で戦うべきか」を見極めたいとき。差別化の切り口や、ニッチ市場への参入戦略が明確になります。

作成の手順:

1. ターゲット層のニーズ、KBF(購買決定要因)を洗い出す
2. 競合を分析し比較する
3. タテ・ヨコ2つの軸を決定する
4. マトリクスに自社・競合をマッピングすることで「空白のポジション=市場の隙間」を発見できる

②ビジネスモデルキャンバス:全体像を一枚で整理できる

9つの要素(顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客との関係、収益の流れ、主要リソース、主要活動、パートナー、コスト構造)で事業を俯瞰できる便利なフレームワークです。図式化することで関連性や抜け漏れが一目でわかるため、チーム内での合意形成とコミュニケーションが円滑になります。新規事業の初期段階で作成し、フィードバックを得ながら都度アップデートする運用方法がおすすめです。

どんなときに使う?
➡ 事業の構成要素をチームで共有・可視化したいとき。図で一目瞭然になるため、チームの共通理解が深まり、修正も簡単。初期段階のプラン策定から、ピボット後の見直しにも使えます。

9つの要素を整理:

  1. 顧客セグメント

  2. 価値提案

  3. チャネル(提供方法)

  4. 顧客との関係

  5. 収益の流れ

  6. 主要リソース

  7. 主要活動

  8. パートナー

  9. コスト構造

③SWOT分析:自社の強み・弱みを客観視する

自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、外部環境における機会(Opportunity)と脅威(Threat)を洗い出すことで、事業戦略の方向性を立体的に検討する手法です。特に新規事業では既存の実績が少ないため、想定されるリスクと活かせるリソースを同時に可視化することが重要になります。単に表を埋めるだけで終わらず、強みと機会を掛け合わせるのか、弱みと脅威をどう抑えこむのかなど、複数のシナリオを想定しておくとリスク管理にも役立ちます。

どんなときに使う?
➡ 自社の立ち位置や外部環境に対するリスク・チャンスを洗い出したいとき。戦略の方向性や資源配分の優先順位にも役立ちます。

分析の4軸:

  • S:Strength(強み)

  • W:Weakness(弱み)

  • O:Opportunity(機会)

  • T:Threat(脅威)

④3C分析:「顧客・自社・競合」のバランスを最適化

Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の視点から事業環境を分析し、自社にとっての最適解を導き出すフレームワークです。新規事業では未確定要素が多いからこそ、顧客ニーズと自社の強みを的確にマッチさせるために3C分析は有効です。競合がカバーしきれていない顧客ニーズを探りあてれば、スピード感のある成長が期待できます。

どんなときに使う?
➡ どんな顧客に、どんな価値を、どう届けるべきかを見極めたいとき。競合がカバーできていないニッチなニーズを狙うことで、早期の優位性を築けます。

3つの視点:

  • Customer(顧客)…ニーズ・課題・購買動機

  • Company(自社)…強み・弱み・技術・資源

  • Competitor(競合)…市場シェア・差別化要素・脅威

⑤PEST分析:外部環境の変化を見落とさない

政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの観点から環境要因を分析する手法です。例えば技術革新のスピードが速い業界では、ビジネスモデルを柔軟に変更できるようにしておく必要があります。新規事業であれば、これらマクロ要因による規制変更や市場動向の変化が大きなチャンスになることもあるため、定期的にモニタリングするのが好ましいでしょう。

どんなときに使う?
➡ 長期的に影響を与えるマクロ環境を確認したいとき。新たなトレンドをチャンスに変えるためにも、定期的にチェックしましょう。

4つの外部要因:

  • P:Political(政治・規制)

  • E:Economic(経済・景気)

  • S:Social(社会・ライフスタイル)

  • T:Technological(技術進化)

ビジネスモデルに役立つフレームワーク活用のコツ

フレームワークは、事業を整理し、戦略を立てるための優れた道具ですが、使い方次第でその効果は大きく変わります。

まず大切なのは、ひとつのフレームワークだけに頼らず、複数を組み合わせて活用することです。たとえば、SWOT分析で自社の強みと機会を洗い出しつつ、ビジネスモデルキャンバスでその強みをどのようにビジネス構造に組み込むかを検討するといったように、それぞれのフレームワークが補完し合う形で使うことで、より立体的で実行力のある戦略を描くことができます。

また、分析結果を図やマップとして「見える化」することも有効です。チーム内での情報共有や意見交換がしやすくなり、認識のズレや誤解を防ぐことができます。視覚的に整理された情報は、社内外の関係者への説明やプレゼンにも活用しやすい点が魅力です。

さらに重要なのは、フレームワークの分析結果をそのままにせず、実際の行動に落とし込むことです。どれだけ綿密に分析しても、それを活かした戦略や施策に繋がらなければ意味がありません。出てきた仮説をもとに、素早く検証と改善を繰り返すことで、フレームワークが本来持つ価値を最大限に発揮できます。

つまり、フレームワークは考えるための出発点であり、実行と改善のサイクルの中で生かされるべきものなのです。

実在企業に学ぶ!新規事業のビジネスモデル成功事例

成功事例を分析することで、ビジネスモデル構築のヒントや応用方法を学ぶことができます。

新規事業において成果を出している企業の多くは、市場の変化を捉えてビジネスモデルを柔軟に設計・修正してきた点が共通しています。特に、早期の利用者データをもとに機能や価格帯を微調整し、最終的に大きな収益基盤を築くケースが目立ちます。ここでは、いくつか代表的な成功例をもとに、どのような工夫が実際に効果を生んだのかを見ていきましょう。

各事例には、収益の可視化や顧客満足度の向上、他社との協業などさまざまな戦略が組み合わされています。ビジネスモデルによっては早期にキャッシュフローを生む仕組みが求められる場合もあれば、継続利用率を高めることで徐々に利益を拡大していくタイプもあります。事業のフェーズや顧客特性に応じて、どのモデルが自社に合っているのかを常に検討し続ける姿勢が大切です。

① サブスクリプションモデルの成功事例:Spotify(スポティファイ)

音楽ストリーミングサービス「Spotify」は、フリーミアム×サブスクリプションモデルの代表格です。無料プランでユーザーを獲得し、有料プランへのアップグレードを促す仕組みを構築しています。

<成功の要因>

  • 無料での利用ハードルの低さによるユーザー数の急拡大

  • パーソナライズされたプレイリストにより、継続利用を促進

  • 有料プランは広告なし・高音質など、明確な価値を提供

このように、段階的なユーザーの囲い込みと体験価値の向上によって、世界中で有料会員を増やし、安定した収益基盤を築いています。

② フリーミアムから課金転換:Slack(スラック)

ビジネスチャットツール「Slack」は、当初から無料版で広くユーザーを獲得し、チームの成長に応じて課金する仕組みを採用していました。

<成功の要因>

  • 小規模チームでも導入しやすい無料プランの提供

  • チームが拡大・活用が高度化するタイミングで有料プランへと自然に移行

  • 利用状況をもとに、必要な機能や容量のタイミングで課金ポイントを設計

「使ってみて良かった」から「必要だから課金する」へ自然に移行する流れを設計していた点が、成長のカギとなったことが考えられます。

③ マッチングモデルで市場を席巻:Airbnb(エアビーアンドビー)

民泊マッチングサービスの「Airbnb」は、プラットフォーム型のマッチングビジネスで急成長した代表例です。空き部屋を貸したい個人と、宿泊先を探している旅行者をつなぐことで、新たな市場を創出しました。

<成功の要因>

  • 初期段階で「ホスト(供給者)」と「ゲスト(需要者)」の両側をバランスよく集める戦略

  • 口コミ・レビュー機能により信頼性を高め、ユーザー間の安心感を醸成

  • 決済・保証・カスタマーサポートまで一括で提供し、利便性を最大化

ネットワーク効果を活かしたプラットフォーム戦略により、旅行業界の常識を変えるイノベーションを実現しています。

まとめ|強固なビジネスモデルで新規事業を成功へ導こう

新規事業は未知数の要素が多いため、まずは仮説を立てながら市場ニーズに合致するビジネスモデルを絞り込み、低リスクの形で検証を積み重ねることが重要です。リーンスタートアップの考え方を取り入れれば、初期投資を抑えつつ、顧客との対話を通じてモデルの正当性を確認できます。必要ならばピボットにも柔軟に対応し、実際のデータや利用者の声を反映しながら継続的に改善を施しましょう。

成功事例を分析すると、競合優位性の確立、顧客維持率の向上、リソース活用の効率化など、多様な戦略の組み合わせによって新規事業が成長しているのがわかります。自社のビジネスに合ったモデルを選択し、フレームワークを用いて全体設計を可視化しながら、顧客と市場の変化に順応する姿勢が何より大切です。最終的には、顧客が感じる価値と企業が収益を得る仕組みを一致させることが、新規事業の持続的な成功を生む大きな要因となるはずです。

この記事を書いた人
加藤 英里

新卒で入社したリクルートにて、地域振興事業の立ち上げから推進まで9年間従事。プロモーション企画立案、ご当地グルメプロデュース、イベント主催などの他、講演やセミナー講師も務める。2014年5月から現職。BtoB・BtoC問わず、病院・結婚式場・メーカー・レジャー施設などのWEB集客コンサルティングに従事。

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