経験者採用を成功させるコツ!中途人材の早期離職を防ぐ採用ポイントや注意点を解説
この記事では、経験者採用のメリット・リスク、採用成功につながる大切なポイントなどを解説します。経験者採用を通じて自社に合う人材を獲得したい方は、ぜひ記事を参考にしてください。
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はじめに
経験者採用を本当の意味で成功させるためには、適切な流れで計画立案や採用活動を行うことが大切です。なお、近年の採用市場では、2022年に経済団体連合会(経団連)が出した方針の影響から、中途採用に代わる言葉として「経験者採用」が使われることが多くなりました。なかには、キャリア採用と同じ意味で「経験者採用」という表現を使う企業もあります。この記事では、経験者採用のメリット・リスク、採用成功につながる大切なポイントなどを解説します。経験者採用を通じて自社に合う人材を獲得したい方は、ぜひ記事を参考にしてください。
経験者採用のメリットとリスク
冒頭で触れたとおり、経験者採用は従来の中途採用を指す言葉です。経験者採用の主な特徴は、この採用手法のメリットとリスクに注目することでよりイメージしやすくなります。ここでは、一般的なメリットとリスクを紹介しましょう。
経験者採用のメリット
経験者採用の主なメリットは、以下の3つです。
- ・即戦力人材を獲得しやすくなる
- ・人材教育の手間やコストを抑えられる
- ・自社にないノウハウなどを吸収できる場合もある
経験者採用で獲得した人材には、社会人経験があります。新卒社員には欠かせない以下のような教育は不要です。
- ・ビジネスマナー
- ・ビジネスコミュニケーション
- ・学生から社会人への意識変革 な
同じ業界・職種で豊富な経験を積んだ人材を獲得した場合、以下のような業務知識の教育もあまり必要ないかもしれません。
- ・【営業職】商談の基本セオリー、ラポール形成の重要性、見積書や請求書などの作成方法、SFAツールの使い方
- ・【ITエンジニア】プログラミング言語、情報システム用語、情報セキュリティの基礎 など
経験豊富で優秀な人材を獲得した場合、ほかの企業が当たり前に使っている最新ノウハウなどを吸収できることもあるでしょう。
経験者採用のリスク
経験者採用で獲得した人材は、自社の価値観や方針にマッチするとは限りません。仮にある人材が自社の方針に違和感や不満を抱いた場合、本人のモチベーションが低下し、能力が最大限に発揮されないこともあるでしょう。やる気がさらに低下すれば、早期離職をする可能性もあります。また、モチベーションが下がった人材は、ほかのメンバーの士気などに悪影響を及ぼすかもしれません。また、優秀な即戦力人材を求めて経験者採用に力を入れすぎた場合、組織内に以下の問題が生じることもあります。
- 社内の人口ピラミッドが崩れる
- 既存社員(特に新卒・若手)の育成や成長に支障が出る
- 採用方法や待遇などへの不公平感から、既存社員の離職者が増加する など
経験者採用の成功に向けて実践すべきポイント
経験者採用の成功とは、自社が求めるスキルや価値観などに合う人材を獲得したあと、彼らが自分の能力を最大限に発揮したうえで定着し、組織に良い影響をもたらしてくれることになります。想定できるリスクを防ぎ、経験者採用を本当の意味で成功させるためには、以下のポイントを大切にしながら適切な採用準備を進める必要があります。
ターゲットの明確化
ターゲットの明確化とは、獲得したい人材の特徴を言語化によって絞り込むことです。経験者採用の場合、即戦力に近い人材を獲得する目的から、以下のように必要スキルや経験を明確にすることが特に重要となります。
- 【営業職】英語によるITソリューション営業経験2年以上、TOEIC700点以上、営業チームのマネジメント経験および中国語も堪能であると尚可
- 【ITエンジニア】住民情報システムの知識と開発経験、C#およびnetを用いたプログラミング経験3年以上 など
上記のようなターゲットがすぐに思い浮かばない場合は、自社の事業戦略や組織の課題などから求める人物像などを落とし込んでもよいでしょう。ターゲットの明確化をしっかり行なっておくと、企業と人材のミスマッチが生じにくくなります。
採用フローの設計
限られたリソースのなかで効果的な採用活動を行なうためには、自社に合う採用フローを設計する必要があります。採用フローとは、以下のように採用活動のプロセスを細分化したものです。
- (一例)
- 応募受付
- 書類選考
- 適性試験&一次面接
- 二次面接
- 社長による最終面接
- 内定通知
理想的な採用フローは、「自社が何を重視するか?」で変わります。
たとえば、価値観や方針のミスマッチを防ぐために、対話による相互理解を重視したい場合、正式な応募前にカジュアル面談を実施するもの一つです。ただ、自社に関心を持ったすべての人材とのカジュアル面談をすれば、担当者の負担は大きくなるでしょう。
また、近年では、魅力付けに力を入れる目的で最終面接を社長に実施してもらう企業も多くなりました。この場合、応募者を待たせすぎないスピード感で、忙しい社長との日程調整を行なう必要が出てくるでしょう。
採用フローに正解はありません。ただ、自社のキャパシティに無理のない範囲内で、「魅力付け」と「見極め」に関するイベントをバランスよく組み込んでいく設計が一般的となります。経験者採用の面接では、応募者の実務経験を重視します。ただし一つ注意点があります。それは、応募者が語る実務経験が「面接用にあらかじめ用意された回答」の可能性がある点です。応募者から事実に基づく経験を引き出すためには、応募者の内面や経験を深堀りするSTAR質問(STAR面接)などが有効となります。
STARとは、「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(結果)」の頭文字をとった言葉です。実際の面接では、過去の経験に対して以下のような流れで深堀りをしていきます。
- 【Situation(状況)】Aさんが最もリーダーシップを発揮したプロジェクトの概要を教えてください。
- 【Task(課題)】そのプロジェクトには、どのような課題がありましたか。
- 【Action(行動)】Aさんはその課題解決のために、どのような行動をとりましたか。
- 【Result(結果)】Aさんが◯◯の施策を講じたことで、そのプロジェクトの課題はどのように改善されましたか。
自社が大切にする価値観や考え方とマッチするかどうかの確認では、特定のお題について以下のような仮説を考えてもらう「ケース面接」も有効となります。
- 数年前から営業メンバーのモチベーションが下がり、最近では部門全体の売上も伸び悩むようになりました。Aさんが営業リーダーに就任した場合、どのような施策でメンバーのモチベーションと売上を上げていきますか。
採用担当者のトレーニング
自社に合う人材を獲得するためには、トレーニングを通して採用担当者のレベルアップを図ることも大切です。レベルを上げる必要のあるスキルには、主に以下の2つがあります。
- 自社の基準にマッチする人材を「見極める力」
- 自社の基準にマッチする人材に「魅力付けをする力」
人材の見極めでは、自社が求める採用ターゲット像を理解したうえで、そのターゲットに不可欠な経験・スキルの有無を的確に見極める質問力が必要となります。見極め力のトレーニングでは、以下の要素を共有したうえで担当者全員での面接のロールプレイングを実施します。そうすることで、誰が面接官でも主観に頼らず同じ基準で人材を見極めることが可能となるでしょう。
- 今回の経験者採用で求めるターゲット像
- そのターゲットを採用するために注目すべき具体的なスキル・経験
- そのスキル・経験の有無を見極めるための質問と評価基準
採用ターゲットの理解は、魅力付けをする力を高めるうえでも大切です。
たとえば、自社が求めるターゲットに以下の悩みやニーズがあることが多い場合、その内容に対する適切な答えや情報をあらかじめ用意しておくことで、会社説明会や面接の際に相手を惹きつけるアピールなどがしやすくなります。
- 【女性でもキャリアアップできるか不安】
- ⇒女性社員の割合が◯%、これは業界内でもかなり高い数字
- ⇒子育てママ社員が2人も管理職になっている
- ⇒女性社員は月1で悩み相談ランチ会を実施している
- ⇒女性社員のキャリアを支える制度として◯◯と◯◯がある
- 【20代で経験を積み、35歳までに独立したい】
- ⇒それぞれのキャリアプランに合った支援が可能
- ⇒独立後はフリーランスで弊社プロジェクトに参加することも可能
- ⇒他社でスキル習得したい人のために、副業制度もあり など
なお、採用担当者は、応募者と最初に接触する「企業の顔」であるとともに、説明会や面接で自社の魅力を伝える「営業パーソン」に近い存在でもあります。採用担当者が応募者に対して横柄な態度をとれば、「こんな人とは一緒に働きたくない……」などの想いから、入社意欲が低下することもあるでしょう。こうした問題を防ぐためにも、採用担当者のトレーニングでは、採用活動をするうえで必要な意識と態度をレクチャーし、それぞれに「企業の顔」であるという自覚をもたせることも大切になります。
オファーや条件面談の設計
条件面談(オファー面談)とは、企業と内定者の双方で労働条件と入社意欲のすり合わせを行う面談の総称です。近年では、さまざまな転職サービスが普及したことで、転職者が複数企業への応募をすることも珍しくなくなってきています。また、優秀な人材であれば、複数の会社で選考が進み、いくつもの内定を獲得することもあるでしょう。
こうしたなかで内定者を入社につなげるためには、条件や処遇のすり合わせとともに面談のなかで魅力付けを行い、自社への入社意欲をもう一度高めてもらうことが大切になります。条件面談では、内定者が選考中は控えていた質問が出てくることもあります。条件面談の設計では、内定後だからこそ出てくる質問を事前に想定し、内定者の不安を解消する回答を用意しておくことも大切です。
オンボーディング計画の作成
経験者採用は、自社に合う人材を入社させて終わりではありません。入社した人材を組織に馴染ませ、なるべく早く戦力になってもらうためには、一連の流れや施策をまとめたオンボーディング計画の作成・実施も必要です。一般的なオンボーディングでは、以下のような施策を盛り込むことが多いでしょう。
- 上層部やチームメンバーとのウェルカムランチ会をおこなう
- 動画視聴と1on1で、自社のMVVとそれに基づく営業手法を理解してもらう
- 配属部門の上司が責任を持ってモチベートを行う
- 他部門とのネットワークづくりを支援する
- 週1回の面談でエンゲージメントを測定する
- 心理的安全性の高い組織をつくっておく など
経験者採用の場合、それぞれのスキル・経験に個人差があることも多いです。それはつまり、対象者ごとに支援内容を変える必要があることを意味します。また、オンボーディングを成功させるためには、新しい人材を受け入れる現場の同僚や上司などの理解・協力も必要です。本人には会社が求める期待値を伝え、新しい人材をみんなで戦力に育て上げるイメージを持ってオンボーディングに取り組む必要があるでしょう。
経験者採用で起こりがちな失敗と注意点
実施した経験者採用およびその準備が以下のポイントに該当する場合、自社が求める採用成果が出なかったり、社内の人材マネジメント全体に悪影響が生じたりすることがあります。各注意点を詳しく見ていきましょう。
評価基準の統一不足
自社が求める人材の評価基準は、すべての採用担当者がその内容を理解・活用してこそ高い効果を発揮するものです。逆にいうと、たとえば採用部門の上司が自分1人で作成した評価基準を誰にも共有しない場合、その評価基準は、面接などで活用されることがない「絵に描いた餅」になってしまうでしょう。特に、新事業所の設立などでたくさんの経験者を採用する場合、その採用活動に携わる担当者間で評価基準を共有し、採用面接などに役立てていくことが必須となります。評価基準が共有されてこそ、採用活動の標準化や採用品質の向上も可能になるでしょう。
スキル偏重の選考
経験者採用の場合、即戦力を求める目的から「Javaでのプログラミング経験」や「SaaS法人営業部門でのリーダー経験」といったスキル・経験が重視されがちです。ただし、その人材が自社の企業文化やチームの価値観とまったく合わない場合、本人・組織・プロジェクトに以下のような問題が起こりやすくなります。
- 作業能力がとても高い一方で、既存メンバーとの良好な関係構築ができない
- 上司や組織に反発した結果、派閥を作ってしまう
- チーム内の心理的安全性が低下する
- 多くの時間とコストをかけて採用したのに、早期離職されてしまう など
上記のような問題を防ぎ、中途人材に組織内で活躍してもらうためには、企業文化やチームとの相性を重視するカルチャーフィットの視点も必要となるでしょう。
過度な期待
経験者採用の場合、各人材が持つ豊富な知識や経験は、採用企業にとって魅力的に映るものです。ただ、その期待があまりに大きすぎる場合、中途人材にとっては「こんなはずじゃなかった……」と感じるほどの負担になることがあります。採用分野では、入社前に抱いていた理想的なイメージと、入社後の現実に大きな乖離が起こることを「リアリティショック」と呼びます。
大きすぎるリアリティショックは、離職の引き金になるものです。苦労して採用した人材の早期離職を防ぐためには、本人の能力やキャパシティを理解したうえで、負担にならない範囲内での期待をかける必要があるでしょう。
選考過程の透明性不足
経験者採用の応募者・内定者と既存社員のすべてから信頼されるためには、選考プロセスの透明性と公平性を確保することが大切です。近年は、企業での競争が激化するなかで、多くの会社が「優秀な人材を早く獲得したい」と考える時代です。ただ、そういうなかで特定の人材だけに、たとえば「貴女は経験豊富なので、適性検査と二次面接は不要です」といった著しい優遇や差別的な対応をとると、その事実が発覚したときに社会からの信用を失うことになります。
特に現代は、SNSの時代です。応募者個人も「◯◯会社に応募した!」や「◯◯会社の面接ダメだった!」などの感想を気軽に投稿することが多くなっています。こうしたなかで、自社に不都合な情報がSNSに流れる問題を防ぐためには、応募者や既存社員に違和感・不信感を与えない対応をする必要があるでしょう。
まとめ
経験者採用を成功させるためには、スキル・経験に加えて、仕事の価値観や考え方の部分で自社とマッチするかどうかの判断が必要です。また、近年の労働市場では、転職の一般化などによる早期離職も起こりやすくなっています。こうしたなかで、獲得した人材の定着や早期の戦力化を促すためには、現場を巻き込んだオンボーディング施策の計画・実践なども必要でしょう。