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【社長業】クライアントの課題の80%は「本質」ではないという真実

中小企業の経営において、「見えている課題」ではなく、「隠れている本質」を見抜く力が、成長の鍵を握ります。本コラムでは、表面的な依頼や相談の奥に潜む“本当の課題”にどうたどり着くか、そしてそこから理想を起点にした逆算思考で事業を進める重要性を、社長業の視点から紐解きます。経営判断の質を高めるための思考法について、幅広く解説します。

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依頼される内容の8割は「本質」ではないと心得るべき

中小企業の現場でよくあるのが、「採用がうまくいかない」「営業が弱い」「新規事業が進まない」などの悩みが、実は本質とはズレているケースです。経営者や管理職が口にする「困っていること」の多くは、あくまで氷山の一角──つまり“現象”に過ぎません。その背景には、理念の浸透不足、戦略の不一致、組織風土の問題、評価制度の歪みなど、複雑に絡み合った構造的な課題が潜んでいることが大半です。

私たちは、こうした現象に対して「なぜそれが起きているのか?」と掘り下げていく必要があります。採用が難航しているとしたら、そもそも自社の存在意義や求める人材像が明確に定義されていないことが原因かもしれません。営業が機能しないのは、営業戦略と評価制度が合っておらず、行動指針がブレている可能性があります。こうした“真の課題”に気づかないまま打ち手を打っても、効果は限定的で、最悪の場合は努力が空回りするだけです。

社長として、最初にすべきは「見えている課題を鵜呑みにしない」ことです。自社に対しても、外部支援者に対しても、「なぜそう感じるのか?」「それが解決されると、どうなるのか?」と問いを重ね、構造を見極める姿勢が不可欠です。見えている課題に飛びつかず、裏側にある“本当の問い”に迫ること。それが、精度の高い経営判断の第一歩なのです。

理想起点で考えることで、本当にやるべきことが見える

本質的な課題を見極めるためには、現状起点の思考から脱却し、「理想起点」で考えることが必要です。「いま何に困っているか」ではなく、「本来どうありたいのか」「どんな状態を目指したいのか」──この視点に立たなければ、戦略も施策も本質からズレてしまいます。

たとえば、ある製造業の社長が「売上が伸び悩んでいる」と相談してきたケース。ヒアリングを進めると、実は「地域に根ざした信頼される企業になりたい」という想いがありました。しかし、商品ラインナップは価格競争に陥り、営業は量を重視するスタイルで、理念と実態が乖離していたのです。そこで、「地域に選ばれる価値づくり」を軸に、ブランディングと営業手法の再構築に着手したところ、半年で新規受注率が40%改善し、社員のエンゲージメントも明らかに向上しました。

理想から逆算することで、「何をやるべきか」だけでなく、「何をやらなくていいか」も明確になります。多くの中小企業がリソースの制約を抱える中、やらなくていいことを見極める力こそが、事業を加速させる鍵です。社長は常に、「理想を語れるか」「その理想から逆算できているか」を問い直す必要があります。

クライアントの要望は“現象”であると捉えるプロフェッショナル思考

社長業を「自社の課題解決」だけでなく、「取引先・顧客の支援者」としての視点でも捉え直すと、見えてくる景色が変わります。特にBtoBビジネスでは、相手企業の成長を支える存在になることが、取引の継続性と信頼の礎となります。その際に欠かせないのが、「相手の要望をそのまま受け取らない」という姿勢です。

「この広告を打ってほしい」「営業研修をやってほしい」──こうした要望の奥には、売上が落ちている焦り、社内のモチベーション低下、経営者自身の迷いなど、さまざまな背景があります。プロフェッショナルとしての関わりとは、「なぜそれをやりたいのか」「本当にそれが必要か」を共に深掘りすること。そこにこそ、他社にはない“圧倒的な信頼”が生まれます。

表面的な要望に応えるだけでは、一時的な満足しか提供できません。むしろ、経営者自身も気づいていない理想像を一緒に言語化し、その実現に向けた“伴走者”になることが、今の時代のビジネスパートナーとしての真価なのです。クライアントにとっても、「真に考えてくれている」と実感できる存在は、唯一無二の存在感となり、長期的な関係を築く基盤になります。

本質に向き合える組織だけが、圧倒的なスピードで成長できる

中小企業の成長は、「正しい問いを立てる力」に比例します。どれだけ行動量があっても、問いの精度が低ければ、努力の方向がズレてしまい、かえって非効率になることもあります。逆に、「なぜこれをやるのか」「何を達成したいのか」が明確であれば、社員の判断も行動もブレなくなり、組織全体のスピードが飛躍的に高まります。

この状態をつくるには、社長自身が「問いの起点」となる必要があります。「今、我々がやっていることは、本当に理想に近づいているか?」「その理想は、我々らしいと言えるものか?」──こうした問いを投げかけ続けることが、組織全体の思考精度を引き上げ、主体性を促すきっかけになります。

また、問いを共有することで、社内の“対話”の質が高まります。「なぜ?」を共有できる組織は、「どうすれば?」も一緒に考える文化が根づきやすく、変化への対応力が飛躍的に上がります。つまり、“問い”は経営資源であり、会社の成長スピードを決定づける最大のレバレッジなのです。

まとめ:理想を起点に「問い直す力」が、唯一無二の経営資源になる

中小企業の成長には、課題解決の技術だけでなく、「そもそも本当の課題は何か?」という問い直す力が欠かせません。現象に振り回されず、本質に光を当てる。そのためには、理想起点の思考と、背景を掘り下げる問いの習慣が必要です。

グローカルが支援したあるサービス業の事例では、最初に寄せられた相談は「新卒採用が難航している」ことでした。しかし、話を深めていく中で、真の課題は「理念が社内外に発信されておらず、企業の存在意義が伝わっていないこと」だと判明しました。そこから理念を再定義し、採用プロセスを抜本的に再設計した結果、翌年には応募者数が2.4倍、内定承諾率が1.8倍に伸びたのです。

本質を見抜き、問い直し、理想から逆算する。これこそが、社長業における最も重要な経営スキルです。市場や時代が変わっても、“問いの力”は不変です。他にはない価値を生み、唯一無二の存在になるために、今こそ「課題の奥」を見抜く視点を、経営のど真ん中に据えていきましょう。

 

この記事を書いた人
浅野 道人

新卒で入社した総合人材会社インテリジェンスにて法人営業を経験した後に、 経営コンサルティング会社にて大手から中小ベンチャー企業まで規模を問わず 人事領域のコンサルティングに従事。 その後、楽天にて人事・総務職、外資系人材会社にて営業マネージャー・人事職を経験。 現在、代表取締役として、WEB集客コンサルティング事業、組織・人事コンサルティング、キャリア支援事業を担当。

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