管理職研修は意味が無い? 中小企業が管理研修を成功させるためのポイント解説

当コラムでは、多くの経営者・中小企業を見てきた経営コンサルティグ会社の視点から
「組織力向上に悩む経営者様」に向けて、管理職研修の重要性から、中小企業が管理職研修に取り組む際のポイントまでを解説させていただきます。
中小企業の経営者様。
管理職研修の導入、こんなお悩みありませんか?
「人手不足を実感しているのに、このままじゃ社員が成長しない」
「以前、管理職研修を導入したものの、数カ月後には皆内容を忘れていた」
「組織力向上を図りたいが、意味のある管理職研修なんて本当にあるのだろうか」
中小企業の経営者の中には、このような悩みからなかなか管理職研修の導入に踏み切れない方も少なくはないのでしょうか。実際に我々も経営コンサルティングを行う中で、中小企業経営者様や人事担当者様から上記のようなお声をいただきます。
一方で人口減少が加速し採用難になる現在において、組織強化を目的とした社員教育の重要度は増してきています。特に採用難が謳われる中小企業様においては、採用以外の組織力強化として、現社員による組織力の底上げは避けることができません。
当コラムでは、多くの経営者・中小企業を見てきた経営コンサルティグ会社の視点から
「組織力向上に悩む経営者様」に向けて、管理職研修の重要性から、中小企業が管理職研修に取り組む際のポイントまでを解説させていただきます。
中小企業における組織力強化の重要性
限られた人員・リソースで高い成果を求められる中小企業では、組織全体の「連携力」や「適応力」が企業の継続的成長を左右します。とくに次の3つの観点で、組織力強化は急務と言えます。
・労働力人口の減少
日本の総人口は2010年の約1.28億人から2023年には約1.245億人へと減少し、このままでは2040年にさらに約700万人もの労働力が不足すると予測されています。中小企業では新卒・中途を問わず採用にかかる時間やコストが増大しており、その間も事業は止められません。だからこそ、既存社員をいかに早く“戦力”として育て上げ、長期的に活躍し続けてもらうかが、企業の安定運営を支える鍵となります。
・若手の定着と成長支援
現在の若手社員は「働きがいのある環境」や「自己成長の実感」を重視する傾向が強まっており、単に指示をこなすだけでは早期離職につながりかねません。管理職が定期的な1on1面談や具体的なフィードバックを通じて、キャリアプランの相談やスキルアップのサポートを行うことで、若手が「この会社で一歩ずつ成長できる」と感じる環境をつくり、定着率を高めることが重要です。
・DX推進の人材要件
国内企業の約60%がAIやRPAの導入を検討していますが、ツールの導入だけでは成果に結びつきません。現場で実際にデジタル技術を使いこなし、周囲を巻き込みながら業務改善を進められる人材が求められます。そのため、管理職自身がデジタルリテラシーを身につけ、日々の業務に定着させるリーダーシップを発揮できるよう支援することが、DX投資の成功に欠かせません。
このような背景から、中小企業においては組織力強化を採用のみに頼るのではなく、社員自体の能力の底上げが求められています。さらに若手社員の即戦力化や離職率低下が求められる状況に置いて、管理職のマネジメント力向上が組織力向上における一番の鍵になると考えます。
中小企業の組織力向上に「管理職研修」が有効な理由
組織力を底上げするには、現場と経営をつなぐ“管理職”の役割が非常に大きくなります。管理職研修を通じて身につけられる主なメリットは以下のとおりです。
早期戦力化の推進
部下育成やOJT設計の手法を学ぶことで、管理職は「何を」「いつまでに」「どのように」教えるかを計画的に実行できます。
DX活用の加速
管理職自身がデジタルツールの活用方法を理解すると、現場での定着を円滑に進められ、投資効果が確実に得られます。
定着率向上へのアプローチ
フィードバック技法やエンゲージメント向上策を学ぶことで、若手が「この会社で成長したい」と感じられる環境を整えられます。
管理職研修は、組織力強化を図るうえで「必要な技能を最短距離で習得し、すぐに現場に適用できる」有効な手段です。次章では、具体的な研修設計のポイントをご紹介します。
中小企業が取り組むべき管理職研修とは?
管理職研修には、目的によって様々な研修内容がございます。一般的な研修内容と目的に加え、弊社として中小企業が優先的に取り組むべき内容を記載しています。
<評価基準>
◎:経営課題の「即効性」と「定着」に直結するテーマ
〇:組織力強化に向けた基盤づくりや、中長期的に必要となるスキル
△:他テーマ実施後、さらなる深化や補完として取り組むと効果的
優先度評価の解説
◎(高優先)
“即効性”と“定着性”の両面で効果が大きい「OJT計画・1on1運用」と「エンゲージメント強化」は、まず手をつけるべき最重要テーマです。若手の成長支援と離職防止を同時に進めることで、早期に組織力の底上げが期待できます。
〇(中優先)
「デジタルリテラシー」「リーダーシップ理論」「部下フィードバック」「問題解決」は、組織の基盤を固めるためのスキル習得フェーズ。◎の取り組みと並行しながら、数カ月かけて計画的に進めるとよいでしょう。
△(低優先)
「チェンジマネジメント」「アクションラーニング」「プロジェクトマネジメント実践」「マネジメント基礎」は、組織力強化のさらなる深化や補完的なテーマです。まずは◎→〇の実施を通じて組織の“土台”が整ってから取り組むことで、より効果が高まります。
”意味の無い”管理職研修になる要因と対策
まずは、なぜ多くの研修が形骸化し、「意味がない」と評価されてしまうのかを押さえましょう。
①単発+座学の研修で終わってしまい、アウトプットができない
・学んだ知識が現場に落ちない
研修当日の講義だけで満足し、その後の実践支援や振り返りがないと、学んだ内容は自然と忘却されます。
・「やった感」だけが残る
研修を受講したという事実だけが社内に共有され、具体的な行動変容や成果につながりません。
<対策ポイント>
・研修後すぐに「翌週に試す行動」のタスクを設定
・1ヵ月/3ヵ月後のフォローアップを必須化し、進捗を共有する
②自社課題に則していない汎用的なカリキュラム
・他社事例の丸写し
業界や規模感の異なる企業の成功事例をそのまま採用しても、自社の文化や現場の課題に合わず、受講者は「自分ごと化」できません。
・抽象的案内容に終始してしまう
マネジメント理論を学ぶだけでは、部下育成やプロジェクト推進といった「具体的な次の一手」が描けず、研修後の行動が曖昧になります。
<対策ポイント>
・自社の数値データや進行中プロジェクトをワークの題材にする
・研修内で「自社の○○問題をこう解決する」という実践プランを作成し、即社内共有
③成果を測るKPIが設定されていない
・定量評価なしで感覚値に終わる
研修効果を「なんとなく良くなった」で評価すると、経営層も人事も次回の投資判断ができず、継続的な改善が行われません。
・コミットメントの低下
「研修だけやって満足」では、管理職自身も「研修はおまけ」と捉え、学びを日常業務に活かそうという意識が芽生えにくくなります。
<対策ポイント>
・研修前後で「1on1実施率」「新人定着率」「プロジェクト納期遵守率」など具体的KPIを設定
・定期的に経営層がKPI進捗をレビューし、未達の原因を現場とともに分析・対策立案
外部委託?自社内製?管理職研修の取り組み手法
実際に管理職研修を実施する際には、自社で実施するか外部に委託するか、または両者を組み合わせるか迷う経営者様も多いのではないでしょうか。取り組み方は「外部委託」「自社内研修」「ハイブリット」と3つのパターンがあります。
もちろん投資を行い外部委託をすることで質の高い講習を受けることも可能ですが、コスト面さらには、「学んで終わり」にしないためにも「自社」での取り組みや「外部委託」と「自社内研修」を組み合わせた「ハイブリッド」もおすすめしております。
また研修内容によって選択手法の適正もありますので、下記参考に取り組み方をご検討いただけると幸いです。
おわりに
管理職研修は「やって安心」ではなく、組織力を確実に高めるための戦略的投資です。本コラムでご紹介した中小企業における研修内容の優先度や実施方法を参考に、自社の課題に最適な研修プランを設計し、継続的な組織力強化を図りましょう。