今すぐ取り組みたい組織風土改革とは?具体的な進め方と成功ポイント

従業員のモチベーション低下や、働き方の多様化などをきっかけに、組織風土の改革を考える企業も多いのではないでしょうか。当記事では、組織風土改革のポイントや、具体的な進め方について解説します。
組織風土改革が必要な理由
多くの企業が、組織風土改革の必要性に着目しています。まずは、組織風土の概要や必要性について見ていきましょう。
組織風土とは
組織風土とは、企業や職場における「価値観」「行動様式」「コミュニケーション」などをトータル的に示す概念です。いわば、組織に根付く空気感といえます。たとえば、「チャレンジできる社風」「前例を重視する雰囲気」といった特徴が挙げられます。組織風土は、発言のしやすさや部署間の協力体制など、仕事の進め方にも影響をおよぼすでしょう。また近年では、業績・離職率・社員の成長に関わる基盤的な要素として注目を集めています。
組織風土改革が求められる背景
デジタル化の加速やグローバル競争の激化により、企業を取り巻く環境は変化しています。また、働き方改革や新型コロナ後のハイブリッドワーク定着など、従来の進め方では対応が難しいケースも増えているでしょう。転職が日常化した背景や、若手社員のやりがいを重視する傾向などから、古い組織風土では人材の確保・定着が困難になるケースも見受けられます。そのため、時代に合わせた組織風土への改革が、企業の生き残りにも不可欠です。
組織風土改革のポイント
組織風土改革を行う際には、3つのポイントを意識するとよいでしょう。詳細は以下の通りです。
組織風土改革の目的
組織風土改革を成功させるには、明確な目的設定が不可欠です。曖昧な目的設定は改革の方向性をぶらつかせ、効果的な施策実行の妨げとなります。「風土を変える」という漠然とした目標では、具体的な課題解決につながりにくいでしょう。
また目的を明確化するには、現状分析を行ったうえで、自社の課題を特定することが大切です。問題の本質を見極めたうえで、達成すべき目的を具体的に定めます。目的の例として、「健全なコミュニケーションの促進」「社員の主体性向上」「組織の一体感強化」などが挙げられます。さらに、設定した目的は経営層から現場まで共有することが大切です。関係者に周知することで、改革への理解や協力を得やすくなります。
組織風土と組織文化の違い
組織文化と組織風土は、一見似ているように見えるため、混同する人も多いでしょう。しかし、本質は大きく異なります。組織風土改革を効果的に進めるには、両者の違いを正しく理解することが重要です。まず組織文化は、長年かけて築き上げられた、企業のポリシーや価値観などを指します。「品質を重視する」や「顧客第一主義の企業運営を実現する」といった企業理念に関わる要素は、簡単には変更できない本質的な部分です。
一方の組織風土は、日常業務における行動様式や職場の雰囲気を表します。たとえば、「会議の進め方」「意思決定のスピード」「部署間の情報共有方法」など、比較的に短期間でも変更可能な要素が該当します。
組織風土改革が目指す状態を理解する
組織風土改革で目指す状態は3つあり、すべて組織の成長に不可欠な要素です。1つ目は心理的安全性の向上です。失敗を恐れずにアイデアを提案できる環境があってこそ、業務改善や革新的な提案が生まれます。たとえば、従業員が「この作業、さらに効率化できるのでは」という気づきを自由に共有できる環境では、業務改善が継続的に行われ、組織全体の生産性向上につながります。2つ目は成果を出しやすい職場環境の構築です。業務効率を高める仕組みづくりと、従業員の意欲向上を意識しましょう。3つ目は、経営理念に基づく一貫性のある行動基準の浸透です。従業員が同じ方向を向いて行動できる環境をつくることで、組織としての一体感が生まれ、改革を持続的に進められます。
組織風土改革のステップ
組織風土を改革するには、適切な手順を踏むことが大切です。ここでは、組織風土改革を進めるステップについて解説します。
①現状の把握と課題の明確化
まずは、組織の現状について、正確に把握しましょう。現状の把握では、全社員を対象としたアンケート調査などを実施し、職場環境や業務プロセスに関する定量的なデータを収集します。さらに、部門ごとの個別面談を行えば、数値では見えにくい「現場の声」や「潜在的な課題」を拾いやすくなります。
また、日常業務の観察も重要です。日々の様子をチェックすることで、コミュニケーションパターンや意思決定プロセスなどの実態が見えてくるでしょう。ほかにも、同業他社や業界水準との比較分析を行い、自社の立ち位置を確認することも大切です。自社の離職率・従業員満足度・生産性指標などの定量データについて、業界水準と比較すれば、組織の強みや改善が必要な領域の特定につながります。次に、収集したデータをもとに、社員満足度・業務効率・コミュニケーションの質などの課題を整理しましょう。「部門間の連携不足」「評価制度への不満」など、具体的な問題点を洗い出します。
②目標設定と具体化
現状分析を踏まえ、組織が目指すべき理想像を具体化しましょう。たとえば、「部署の壁を越えて協力し合い、チームワークのよい組織をつくる」といった明確なビジョンを描きます。ビジョンは、経営陣だけでなく、全社員が共感できる内容にすることも重要です。
目標設定においては、定量的指標と定性的指標をバランスよく組み合わせます。定量的な目標では、「離職率を10%削減」や「従業員エンゲージメントスコアの20%向上」などの数値目標を設定します。定性的な目標では、「社員からの提案意見の増加」や「部門間協働プロジェクトの活性化」といった内容を掲げるとよいでしょう。定めた目標は、短期(3か月)・中期(1年)・長期(3年)といった時間軸で段階的に設定し、各フェーズでの達成状況を明確に評価できるようにします。目標達成のためのプロセスも設定し、組織全体で進捗を共有しながら、着実に改革が進められる体制を整えましょう。
③改革プランの策定
つづいて、設定した目標の達成に向けて、具体的なプランを定めます。施策の検討では、ワークショップの開催がおすすめです。たとえば、「組織の強み・弱みを洗い出す」「理想の組織像を描く」などをテーマとします。また6~8名程度の少人数で議論を行うことで、全員が発言しやすい環境を用意でき、本音の議論や建設的な意見交換がしやすくなるでしょう。
ほかにも、上司と部下の信頼関係構築を目的とした1on1ミーティングを導入し、コミュニケーションの機会を用意することも推奨します。評価制度の見直しや、柔軟な働き方につながる制度の整備なども並行して進めるとよいでしょう。
また、管理職のリーダーシップ強化も重要です。管理職には、オープンなコミュニケーションや、建設的なフィードバックなど、模範的な行動が求められます。管理職向けのリーダーシップ研修やコーチング講座を実施し、メンバーの主体性を引き出せるようなスキルを身につけましょう。
④実行とモニタリング
策定したプランを実行に移し、社員の反応や行動変化を観察します。一度に大きな変化を求めるのではなく、小さな成功体験を積み重ねる姿勢が重要です。また、定期的に「アンケート」「インタビュー」「1on1ミーティング」などを行い、意見や課題を収集します。必要に応じて、改善や軌道修正も実施しましょう。PDCAサイクルを回しつづけることで、改革を形だけのものにせず、持続的に取り組む流れを用意できます。
組織風土改革を成功させるポイント
ここでは、組織風土改革を成功させるためのポイントについて解説します。主なポイントは、以下の通りです。
コミュニケーションの質を向上させる
組織の基盤となるのは、メンバー同士で行う「良質なコミュニケーション」です。定期的な1on1ミーティングやチーム会議を通じて、上司と部下、同僚同士で対話する機会を増やします。社内SNSやチャットツールを活用し、情報共有や意見交換を促進するのもよいでしょう。発信するだけでなく、相手の意見や提案に耳を傾ける姿勢も必要です。双方向のコミュニケーションが促進されることで、職場全体の対話力向上も期待できます。
心理的安全性の確保
心理的安全性とは、メンバーが自由に意見を述べ、新たなアイデアを提案できるような環境が該当します。心理的安全性を確保するには、「失敗を責めない」「建設的な意見は歓迎する」といったメッセージを発信することが重要です。「それは違う」「前例がないからムリ」といった否定的な言葉を避け、「確かに、そういった考えもありますね。さらに〇〇という方法を試すのもよいでしょう」など、建設的な表現を心がけましょう。
リーダーの役割を明確化する
組織風土改革において、管理職の「リーダーとしての役割」を明確にすることが重要です。リーダーは部門の変革推進者として、ビジョンや戦略をメンバーに伝え、共感を引き出す役割があります。また、リーダー自身が率先して変革に取り組む姿を見せつつ、メンバーの行動変容を促す模範となることも大切です。リーダーシップ研修やリーダー同士での情報交換の場を設け、役割をすすめる際の課題や成功事例を共有することも、組織全体の変革に役立ちます。
短期的な成功を重ねる
大きな変革は、一朝一夕には実現できません。そこで重要なのが、小さな成功体験を積み重ねることです。たとえば、新たなコミュニケーション施策を導入した際は、「会議の発言が活発になった」「部門の情報共有がスムーズになった」といった具体的な変化を記録し、社内報や社内専用サイトなどで共有するとよいでしょう。また、四半期ごとに「成功事例報告会」を開催し、各部門の優れた取り組みを共有することも一案です。
内製化と外注の使い分けのポイント
組織風土改革を進める際に、内製と外注で迷うこともあるでしょう。ここでは、両者のメリットと活用方法について解説します。
自社で進めるメリット
内製化における最大の強みは、会社の特徴をよく知る社員が中心となったうえで取り組める点です。仕事の進め方・メンバー間の関係性・これまでの改革の成功例や反省点なども把握しているため、現場で実際に使える具体的な取り組みを考えられます。会社の実情に合った施策になりやすく、社員からの理解も得やすいでしょう。また、外部の専門家に依頼する場合と比べて、費用を抑えながら長くつづけられることもメリットです。社員一人ひとりが改革の進め方を学び、実践することで、会社全体の改革スキルも高まるといった利点もあります。また内製化をすると、ノウハウ自体も蓄積されるため、今後の組織づくりにも役立つでしょう。
外部支援を活用するメリット
外部支援を活用する第一のメリットは、社内の常識や価値観にとらわれず、中立的な立場での組織を分析できることです。たとえば、組織診断の専用ツールを使えば、会社の課題が数字やグラフとして可視化されるでしょう。社内では気づかなかった問題点や、会社の強みを発見できることも少なくありません。第二のメリットは、多くの会社で実績を持つ専門家によるサポートを受けられることです。「具体的な改善施策」や「管理職向けの研修」などを通じて、着実に組織改革を進められるでしょう。また、明確なスケジュール管理のもと、業界の動向や他社での成功事例も取り入れながら、改革を進めていけるでしょう。ほかにも、外部の新鮮な視点を活かせることも魅力です。
外部支援の種類は3つ
外部支援の主な依頼先は、「人事コンサルティング会社」「組織開発コンサルティング会社」「フリーランスの専門家」の3つです。人事コンサルティング会社は、人事制度全般に詳しく、給与や評価の仕組みと合わせて、組織改革を総合的にサポートします。組織開発コンサルティング会社は、企業理念や価値観を明確にし、それらに向けた具体的な行動計画づくりに強みを持ちます。社員の意識改革や、組織の活性化に対し、力を発揮してくれるでしょう。フリーランスの専門家は、必要な部分だけピンポイントで支援を受けられ、資料作成などの実務的なサポートも頼めます。自社の予算や期間に応じて、柔軟な対応が可能なことも特徴です。
外部支援の選び方
外注先を決めるときは、2つのポイントを確認するといいでしょう。1つ目は、外注先の経験と専門知識です。具体的には、「同じ業界の会社を支援した実績があるか」「業界特有の問題を理解しているか」などを確認します。また、過去にどのような成果を上げたかや、具体的な成功事例も聞くことも推奨します。
2つ目は、社員との対話力と臨機応変な対応が可能かについてです。組織を変えるには、現場の意見を聞くことが大切です。そのため、外注先が「自社の社員と上手にコミュニケーションが取れるか」が鍵となります。また、状況に応じて計画を見直せるかも確認しましょう。事前の打ち合わせで、担当者の仕事の進め方をよく見ることが大切です。
おわりに
組織風土改革は、社員と会社の双方にメリットをもたらします。社員にとっては、働きやすい職場環境が整備されることで、心身の健康維持につながります。また、自由に意見を発信できる環境が整うことで、各自の成長機会も増えるでしょう。一方の会社にとっては、社員のモチベーション向上による生産性アップや、離職率の低下といった効果が期待できます。さらに、部門を超えた協力体制も強化されやすく、会社全体の目標達成にもつながるでしょう。
しかし、組織風土改革は短期間では成果が出にくいことも事実です。中長期的な視点で取り組み、継続することが大切です。また経営層の強いコミットメントのもと、全社一丸となって、継続的に取り組む必要があります。本記事で紹介したポイントを参考にし、必要に応じて専門家のサポートも検討しながら、自社に合った改革を実践するとよいでしょう。着実な一歩を積み重ねることで、理想の組織風土を実現できるはずです。