中小企業が採用に苦戦する理由~採用課題を解決する3つのポイント~
「求人を出しても応募が集まらない」
「やっと内定がだせたのに入社して数ヶ月で辞められてしまった」
採用担当といっても専任ではなく、本業との兼任で任されることが多い中小企業。何かしなければと思いつつも方法が分からず、1人で悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
本記事では、中小企業における採用の課題や取り巻く環境を整理し、同じような状況を乗り越えて採用に成功した事例をご紹介します。
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中小企業における採用市場の現状
まずは、採用市場において中小企業が置かれている状況を整理してみましょう。
①中小企業の定義
企業の分類方法はいくつかありますが、中小企業の定義は以下のように定められています。業種分類によって多少異なりますが、広義でとらえるならば従業員数300人以下の企業が中小企業になると考えられます。
②中小企業を取り巻く採用市場の動向
東京商工会議所が実施した「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」(2023年9月28日付)調査によると、中小企業の非常に深刻な人手不足の実態が見えてきます。
出典:東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」
少子高齢化の改善の兆しがない中、中小企業の人手不足は今後も高まっていくと考えられます。また、従業員規模別でみたときの人手不足の状況としては、21人~50人での割合が最も高く、規模が大きくなりつつある中小企業で人手不足が起こっているといえます。成長中の企業における人手不足は、より多くの従業員に負担がかかることから、採用等による早急な改善が急務です。
③中小企業が置かれている現状
大企業が働き方改革等に積極的に取り組み、多様な人材・優秀な人材の確保に様々な施策を打ち出す中、中小企業においても人材確保のための取り組みが行われています。「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」(2023年9月28日付)調査では、具体的な施策として「賃上げの実施、募集賃金の引上げ」(72.5%)が最も多く、「ワークライフバランスの推進」(38.1%)と続きますが、コロナ禍で急速に広がったフレックスタイム・テレワーク、副業・兼業など、「多様で柔軟な働き方の推進」は2割に満たず、時代の流れに合わせた組織体制の柔軟さも問われています。
また、「女性のキャリアアップ支援」「仕事と育児の両立」に関しても必要性を感じているという回答がそれぞれ8割近くに達するにも関わらず、うち半数が十分取り組めていないと回答するなど、理想と現実のギャップに悩みを抱える実態が浮かび上がります。
出典:東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」
さらに、新卒者を対象とした求人倍率の調査結果では、全体の求人倍率の水準はコロナ禍以前に戻りつつあり、企業側の採用意欲も増加傾向にあると報告されています。しかしながら、従業員規模300人未満の企業と5000人以上の企業における有効求人倍率の差は、年々拡大しています。
2024年3月卒のデータでは1人の応募者を6社以上で取り合うといった厳しい実態や、大企業と中小企業との差が依然として開いている状況が見えます。コロナ禍以前は新卒者が大企業から中小企業へ目を向ける流れもありましたが、コロナ後に中小企業の採用意欲の回復が遅れたこともあり、その影響も限定的でした。
一方で反面、興味深いデータもあります。学生が希望する企業の従業員数のデータでは、従業員数300人未満、5000人以上を希望する学生はそれぞれ4%ほど減少しているのに対し、300~999人企業、1000~4999人企業を希望する学生はそれぞれ5%ほど増加しており、中堅企業に目を向ける流れが生まれています。
※コロナ禍の影響で学生が就職希望先などを変更しているケースが反映されていないため解釈に注意が必要
中小企業が採用に苦戦する5つの理由
続いて、中小企業が抱える具体的な採用課題について考えてみましょう。大企業と比較した際、中小企業が採用に苦戦する理由は大きく「知名度」「条件面」「応募数」「採用費用」「人的資源(リソース)」の5つに分けることができます。ここでは、それぞれについて解説していきます。
①知名度の不足
中小企業と大企業とを比較した際、圧倒的に不利な点として知名度があげられます。
有名求人サイトや人材紹介会社(エージェント)には多くの企業が求人を掲載しています。応募者からすると、TVCMやネット広告、大規模なPRイベント、アスリートやプロチームへのスポンサー活動等、「自分がこれまで目にしたことのある企業」を「大企業」ととらえている場合がほとんどです。
そのため、大企業であったとしてもBtoB企業はBtoC企業と比べると相対的に知名度が低い傾向があります。大企業の中でさえ差がある状況のため、中小企業ではなおさら知名度を上げることは難しく、応募が集まりにくいという現状があります。
②条件面の不足
大企業と比較すると、給与、福利厚生・休暇制度、教育・研修といった面においても差があります。
1.給与
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」の企業規模別の月収を比較すると大企業は約35万円、中小企業は28万~30万円です。大企業と中小企業の間にはひと月あたり5~7万円、年収にすると60万~84万円の差があることが分かります。また、賞与が加わるとその差はさらに広がります。
2.福利厚生・休暇制度
福利厚生・休暇制度は企業ごとに大きく異なり、年金や保険制度以外にも家賃補助や社宅の完備、育児支援とさまざまです。中小企業では慢性的な人手不足に陥っていることから、ワークライフバランスの推進(残業時間の削減)の遅れや、年間休日日数(大企業平均116.8日、中小企業平均109.0日)の少なさ等、さまざまな面で差が出ていることが現状です。
3.教育・研修
新卒・中途入社に関わらず、大企業では入社後に座学研修やOJT研修、同行研修が実施される場合がほとんどです。しかし、人員にあまり余裕のない中小企業ではOJT研修のみといった場合も多くあります。また、大企業では社内外含めた勉強会の開催、外部研修の参加等の機会が多くありますが、中小企業ではそういった機会が少ないことが現状です。
以上から、給与、福利厚生、教育それぞれの観点で、大企業と中小企業には大きな差があるといえます。
③応募数の不足
前述の通り、新卒・中途採用の両面において、知名度や安定感のある大企業に人が集まりやすいという状況があります。そのため中小企業は常に母集団形成において苦戦を強いられてきました。さらにこの状況に拍車をかけているのが、少子高齢化による労働人口の減少です。
労働人口の減少は、企業規模に関わらずどの企業にも共通する課題です。15歳~64歳の人口は1970年では総人口の68.9%を占めていたにもかかわらず、2020年では59.5%まで減少しており、労働人口は大きく減少していると言えます。
しかしながら、知名度があり人が集まりやすい大企業は、そこまで影響を受けることがありません。一方で中小企業にとっては死活問題になります。母集団を形成するために、求人サイトや人材紹介会社(エージェント)に求人を出すことが多くありますが、このような採用手法は求人を出したら応募が来るのを待つだけの「受け身の採用活動」といえます。知名度のない中小企業がこれらの手法を活用したとしても、自分たちが求めている人材を採用することは難しいことが実情です。結果として、「ターゲットとは異なる人材の応募しか来ない」ということも起こりがちです。
④採用費用の不足
大企業と中小企業では、採用活動にかけられるお金、つまり採用費用にも大きな差があります。採用費用とは、採用活動全体を通して発生した費用のことで、採用媒体の利用料だけでなく人件費などの社内で発生したコストも含まれます。大企業になるほど採用人数が多いため、採用費用の総額は高くなる傾向があります。上場企業含めた大企業は1,800万円にもなり、中小企業の採用費用の総額平均370万円の約2倍にもなります。中小企業では大企業のように潤沢な採用費用をかけることは難しく、むしろどれだけ削減できるかが採用担当者の課題となります。
⑤リソースの不足
中小企業の場合は採用専任の担当者を設けることは難しく、多くの担当者は他の業務も兼任するなど、採用活動に十分な時間を割くことは困難です。
通年採用の実施理由において最も高い回答は「必要な人員数を確保するため」(90.3%)であることに対し、通年採用を実施しない理由において最も高い回答は「採用担当者の負担が増すため」(53.1%)となっています。
日常業務をこなしながらでは採用活動が後回しになってしまうこともあり、戦略的かつ計画的な採用業務が行えていないケースも見受けられます。
中小企業が採用で成功するには
ここからは中小企業が採用に成功する3つのポイントをお伝えします。
①未来を描き独自の魅力を発掘
知名度の低い中小企業は、求人サイトで指定されたフォーマットにただ必要な要件を埋めた求人を出したところで、期待する成果には繋がりません。山のような求人に埋もれてしまうためです。中小企業にとって重要となるのは「未来につながる独自の魅力」を発掘すること、そしてこの魅力を明文化した上で求人に落とし込むことです。これにより、山のような求人に埋もれない、他社との明確な違いをつくりあげることができます。
多くの企業は創業者の強い想いを具現化するために設立されています。しかし創業当初は事業を軌道に乗せることが最優先となるため、会社として大事にしている想いや経営理念、お客様に対してのスタンス等が明文化されていることは稀です。そのため、現在働いている社員にはこれらのメッセージは漠然としており、いざ言葉にしようとすると難しいものと言えます。これでは、応募者が求人を見ても、選考で社員と会って話したとしても、何の魅力も印象も残りません。
創業から現在も存続している企業であれば必ず「製品」「サービス」「経営者」「社員」など、他社にはない独自の魅力を持っています。それらを今後どのようにして伸ばしていくのか、次の10年で何を目指していくのか、しっかりとした未来像と重ねて伝えることで、他社との差別化ができます。
②SNSを含めた情報発信の強化
中小企業の採用では、SNSも含めた情報発信の強化はとても重要です。
「自分たちはあまり使わないから」「詳しくないから」と言って後回しにすればするほど、手遅れになります。
まずは求人の掲載内容を見直すこと、また企業ホームページの定期的なメンテナンス、採用サイトの制作(改修)なども有効な対策となります。最近では「採用マーケティング」や「採用広報」といった言葉が生まれる等、どうやって自分たちから応募者に情報を届けていくのかという観点が重視され、さまざまなツールや手法が使われています。現在の採用活動のターゲットとなる世代は、小さい頃からパソコンや携帯電話に触れ、スマートフォンやSNSが生活の一部となっているデジタルネイティブ世代であり、インターネット上にある情報量の充実は重要なポイントとなります。
中小企業では専任担当を立てることは難しいため、必要な情報を採るべきターゲットにいかに効率良く届けるか、という戦略も重要となってきます。
③採用体制の強化
中小企業では採用を調達に近い感覚で取り組んでいる企業が多くあります。これでは「内定をだしているのに入社してくれる人が少ない」「入社した社員がすぐ辞めてしまう」といった事態が起こりがちです。これらを防ぐためには、採用体制の強化が必要です。
中小企業では、そもそも人事部がない、専任の採用担当者がいないケースが多くあります。また、効率化のために現場の管理職が1回だけ面接を行って内定を判断していることもあります。人手が足りないからこその手段ではありますが、長く働いてくれる人、活躍してくれる人を採用しようとするならば、採用に力を入れるべきです。人事・現場・経営陣それぞれの立場で、人材を評価する体制を作る必要があります。人事は人柄や組織とのマッチング、適性の確認、現場はスキルの確認、そして経営陣は「この人はぜひ入社してほしい」という人材に対して、直接想いをぶつけ入社意欲を高めるといった役割分担が必要になります。採用活動を丁寧に進めていくことで、内定辞退率や早期離職の改善にも繋がります。早期離職が続けば現場の社員はモチベーションが下がり疲弊します。それらを防ぐためにも、人事部の設置、もしくは専任の採用担当者をおくことは必要最低限の組織強化と言えるでしょう。
中小企業の採用における成功事例
最後に、中小企業で採用に成功した事例をお伝えします。
創業200年以上の老舗旅館
A社は創業200年の老舗旅館です。
スタッフの高齢化が進み世代交代が急務でしたが、シフト制、給与の低さ、立地等で正社員の採用に苦戦していました。このままでは立ち行かなくなるという危機感から、採用戦略を変更。
近隣県から転居を伴う入社を想定して社員寮の改装等、福利厚生や人事評価制度を整え、さらに採用サイトに創業者の想いやこれまでの歴史等、すべての情報を明文化してサイトに落とし込みました。
結果として、ターゲット通りの若い世代からの応募が増え、スタッフの世代交代にも成功しています。さらに、応募の時点で採用サイト内にある創業者の想いや歴史を理解し、魅力を感じた人だけが選考に進むため、内定承諾率が上がり、早期離職もなくなりました。
まとめ
本記事では、中小企業が採用に苦戦する理由や、採用で成功するためのポイントについて紹介しました。中小企業の採用は、ただこれをやればいいという簡単な成功事例はありません。
しかし、「独自の魅力」を発掘し、情報発信や選考フローの改善等、地道な工夫を積み重ねることで、徐々に採用活動の中身が変わってきます。
ぜひ今回ご紹介したポイントを参考に採用活動を成功させてください。
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